日本茶の最高峰がもつ特別なお茶【玉露】
「玉露(ぎょくろ)」って、なんだか名前からしてオーラが漂っていませんか?

「お高いんでしょう?」「作法とか難しそう…」なんて思っているそこのあなた、大正解!
でも、それだけじゃないんです。
玉露は一言でいえば「日本茶の王様」。つまり「KING OF JAPANESE TEA」
一度その味を知ってしまえば、もう普通のお茶には戻れない(かもしれない)ほどの、特別な魅力にあふれています。
玉露が玉露たる所以は、そのユニークな育て方。
収穫前の約20日間、茶畑に覆いをかけて日光をガードするという、まるで箱入り娘のようなVIP待遇で栽培されます。
この手間ひまが、お茶の旨み成分「テアニン」をぎゅっと凝縮させ、とろりとした唯一無二の甘みと旨みを生み出すのです。
その希少性も王様の証。
なんと、日本茶全体の生産量のうち、玉露が占める割合はわずか0.8%ほど。
まさに、特別な日のため、大切な人をもてなすための、選ばれしお茶なのです。
なぜ「玉露」という名前なの?
この雅(みやび)な名前、一体誰がつけたんでしょう?由来には諸説ありますが、聞くだけでうっとりするようなストーリーが隠されています。
- 「見た目が宝石のようだった」説:
江戸時代後期、製茶業のパイオニア「山本山」の六代目、山本嘉兵衛さんがお茶を蒸して混ぜていたところ、偶然にも露のように丸まった美しい茶葉が完成。
「これはまるで玉の露のようだ!」と感動し、「玉露」と名付けたという説です。
まさに、奇跡が生んだネーミングですね。 - 「神様からの贈り物」説:
その味わいが、まるで「玉(ぎょく)の露(つゆ)」、つまり「神様が天から降らせた甘い雫」のように格別だったことから名付けられた、というロマンチックな説も。
どちらにせよ、その価値の高さを物語っています。



そんな厨二病心をくすぐるようなカッコいい由来もあります。
他のお茶との違いは?煎茶・かぶせ茶と比較
「玉露も煎茶も、元は同じお茶の木なんでしょ?」その通り!
しかし、育て方の違いが、味や香りに天と地ほどの差を生み出します。
人間でいえば、インドア派かアウトドア派か、といったところでしょうか。
種類 | 栽培方法(日光を遮る期間) | 味・香りの特徴 | 性格(たとえるなら) |
玉露 | 約20日以上 | 濃厚な旨みと甘み、覆い香(おおいか) | 奥深くミステリアスな王様 |
かぶせ茶 | 約1週間~10日 | 旨みと爽やかさの良いとこ取り | 誰とでも仲良くなれる優等生 |
煎茶 | 遮らない(露地栽培) | 爽やかな香りと心地よい渋み | 明るく元気な人気者 |
栽培方法の違い:旨味を生み出す「覆い下栽培」
玉露の美味しさの秘密、それは「覆い下(おおいした)栽培」にあります。
茶摘みの20日ほど前から、茶園によしずや黒いシート(寒冷紗)で覆いをかけ、お茶の木を日光から守ってあげます。
なぜこんな面倒なことをするのか?
実は、お茶の旨み成分「テアニン」は、日光を浴びると渋み成分の「カテキン」に変化してしまう性質があるのです。
日光を遮ることで、テアニンがカテキンに変わるのを防ぎ、「旨み成分マシマシ」の状態で茶葉を育てることができる、というわけです。
この過保護ともいえる育て方こそ、玉露が高級茶たる所以なのです。



生産者によっては、我々が食べるご飯よりも高価な肥料を与えている人もいるみたいです。(羨ましい)
味・香りの違い:濃厚な旨味と「覆い香」
覆い下栽培で育った玉露の味は、まさに衝撃的。
まるで高級な昆布だしのような、とろりとした濃厚な旨みと、口の中に広がるまろやかな甘みが最大の特徴です。
初めて飲んだ人は、あまりの衝撃に「え、これがお茶…?」と固まってしまうかもしれません。
そしてもう一つの特徴が、「覆い香(おおいか)」と呼ばれる、青海苔にも似た独特の香り。
この香りは、日光を遮って育てられたお茶だけが持つ特別なアロマで、上質な玉露の証でもあります。



私も玉露をよく飲みますが、ほんといい玉露は、例えるならスーパーサイヤ人になったような疲れを吹っ飛ばすぐらいの旨味の塊で、疲れた身体がぶっ飛ぶぐらい旨いです。
成分の違い:リラックス効果の「テアニン」が豊富
玉露の旨みの正体であるアミノ酸の一種「テアニン」は、ただ美味しいだけではありません。なんと、心と体をリラックスさせる効果があることが科学的にもわかっています。
脳内でリラックス状態の時に出るα波を増やす働きがあるため、仕事で疲れた脳を癒したり、大事なプレゼン前に心を落ち着かせたりするのにピッタリ。
まさに「飲む瞑想」。玉露を一杯味わう時間は、現代社会を戦う私たちにとって、最高の癒やしとなるでしょう。
初めてでも失敗しない!美味しい玉露の選び方
「よし、玉露デビューするぞ!」
と意気込んでも、いざお店に行くと種類が多くて迷ってしまいますよね。
ご安心ください。
初心者でも美味しい玉露に出会える、簡単な選び方のコツを伝授します。
三大産地から選ぶ(宇治・八女・朝比奈)
まずはブランド米を選ぶような感覚で、有名な産地から選んでみましょう。
玉露には「三大産地」があり、それぞれに個性があります。
- 宇治(京都府): さすがは玉露発祥の地。
上品でまろやかな甘みと、覆い香のバランスが絶妙です。
「まずは王道から」という方におすすめ。 - 八女(福岡県):
全国茶品評会で何度も日本一に輝く実力派産地。
濃厚でコクのある、力強い旨みがガツンと来ます。
「とにかく濃い旨みを!」という方はこちら。 - 朝比奈(静岡県): 爽やかでキレのある味わいが特徴。
香りの高さにも定評があります。
「すっきりとした後味が好き」という方にぴったり。
この三大産地は、日本の玉露生産量の大部分を占めており、品質の高さはお墨付きです。
価格で選ぶ
正直なところ、玉露の価格は品質に比例します。
高価なものほど、旨みや甘みが濃厚で、豊かな香りを楽しむことができます。
とはいえ、いきなり最高級品に手を出すのは勇気がいりますよね。
まずは100gあたり2,000円~3,000円程度のものから試してみてはいかがでしょうか。
この価格帯でも、煎茶との違いは歴然。その美味しさに感動したら、少しずつランクアップしていくのが「玉露沼」への正しいハマり方です。



100g、1500円以下になるとなんちゃって玉露が販売されていることが多いので、2000円あたりを下限に設定しておくといいかもしれません。
案外10g入りとかで小口に販売しているところもあるのでまずは少量で試すのもアリです。
【基本】玉露の美味しい淹れ方|旨味を最大限に引き出すコツ
玉露の真価は、淹れ方で決まります。でも、ご心配なく。
ポイントはたった一つ、「ぬるめのお湯で、じっくりと」。これさえ守れば、誰でもプロ級の味を引き出せます。
- 玉露の茶葉: 1人分 約4g(美味しく飲みたい方は10gぐらいまでしっかり入れてもOK!)
- 急須: 小ぶりなものがベスト
- 湯呑み: おちょこくらいの小さなサイズがおすすめ
- 湯冷まし: 別の湯呑みやマグカップでOK
- お湯
ここが最重要ポイント!沸騰したお湯は玉露にとって鬼門です。
旨みは低温で、渋みは高温で溶け出すので、50℃〜60℃の人肌くらいの温度までしっかり冷まします。
【簡単湯冷まし術】沸騰したお湯 → 湯呑み①に移す(約80℃に) → 湯呑み②に移す(約60℃に)。器を移すたびに約20℃下がると覚えておきましょう。
急須に茶葉を入れ、冷ましたお湯をそっと注ぎます。
お湯の量は1人分60ml程度と少なめに。
茶葉がようやく浸るくらいが目安です。蓋をして、砂時計でも眺めながら約2分、旨み成分が溶け出すのを待ちましょう。
お茶の旨みが凝縮された「ゴールデンドロップ(最後の一滴)」まで、愛情を込めて注ぎ切ります。
複数の湯呑みに注ぐ場合は、少量ずつ交互に注ぐ「廻し注ぎ」で濃さを均一に。
急須にお湯を残さないことが、二煎目を美味しく淹れるコツです。
玉露の楽しみ方を広げるアイデア
一煎目で感動したら、それで終わりではありません。
玉露は一杯で何度も美味しい、コスパ最強(?)のお茶なのです。
二煎目、三煎目の味わいの変化を楽しむ
一煎目とは違う表情を見せてくれるのが玉露の面白いところ。
- 二煎目: 少し温度を上げて70℃くらいのお湯で、待ち時間なしですぐに注ぎます。
旨みに加え、爽やかな渋みが出てきて、味わいがキリッと引き締まります。 - 三煎目: さらに熱いお湯でサッと淹れると、カテキンやカフェインがしっかり抽出され、香ばしい煎茶のような味わいに。



2,3煎目からは、少しづつお湯の温度を上げて、抽出時間を短くしながら楽しんでみてください。
一杯でコース料理のように変化する味は本当に感動的です。
茶殻を食べる
「え、茶殻を食べるの!?」と驚くなかれ。
上質な玉露の茶殻は、とても柔らかく栄養満点。
お湯に溶け出さないビタミンや食物繊維も丸ごといただけます。
- ポン酢や醤油をかけて、絶品おひたしに。
- 塩やごまと混ぜて、ご飯のお供に。
- オリーブオイルと塩胡椒で和えて、サラダのトッピングに。



栄養価が高いので美味しいからって無理にたくさん食べると胃が疲れてしまうのでご注意。
氷出し(水出し)で楽しむ
暑い夏の日には、究極の淹れ方「氷出し」がおすすめです。急須に茶葉と氷を入れ、あとは氷が溶けるのをひたすら待つだけ。
時間はかかりますが、渋みや苦みが一切ない、テアニンの旨みだけが凝縮された、まさに「飲む宝石」のような一滴が味わえます。



水出しした玉露を麦焼酎で割って飲むとびっくりするぐらい美味いので20歳以上のお酒好きにもおすすめです。
玉露に関するQ&A
Q1. 玉露にはどんな効果・効能がありますか?
玉露は美味しさだけでなく、体に嬉しい効果も期待できます。
- リラックス効果: テアニンが脳のα波を増やし、心身をリラックスさせてくれます。
- 集中力アップ: カフェインとテアニンの相乗効果で、穏やかに集中力を高めます。
- 美肌サポート: ビタミンCやビタミンEが豊富に含まれています。
- スッキリ効果: カリウムが余分な塩分の排出を助けます。



玉露の健康効果も期待できますが、美味しく、楽しく、嗜む、お茶として自分時間を最高に演出してくれるので最高なお茶です。
Q2. カフェインは多いですか?
はい、玉露は日光を避けて育てられるため、カフェインが多く含まれる傾向にあります。
しかし、リラックス成分のテアニンがカフェインの興奮作用をマイルドにしてくれるため、コーヒーとは違う、穏やかな覚醒感が特徴です。
カフェインが気になる方は、ぬるめのお湯で淹れたり、水出しにしたりすると抽出量を抑えられます。
Q3. 保存方法で気をつけることはありますか?
お茶はとってもデリケート。「湿気・光・酸素・高温・匂い」が苦手です。
開封後は、密閉できる茶筒などに入れ、直射日光の当たらない涼しい場所で保管してください。
冷蔵庫に入れる場合は、他の食品の匂いが移らないよう厳重に密閉し、使う際は必ず常温に戻してから開封しましょう。
AFTERWORD
日本茶の最高峰であり、飲む芸術品ともいえる玉露。
そのとろりとした一滴には、職人の知恵と日本の自然が育んだ、特別な物語が詰まっています。
淹れ方ひとつで表情を変える奥深さ、飲むほどに変化する味わい、そして茶殻まで余すことなく楽しめる懐の深さ。
この記事を読んで、少しでも玉露に親近感が湧いたなら、ぜひ最初の一杯を体験してみてください。
きっと、あなたの「お茶ライフ」が、より豊かで贅沢なものになるはずです。さあ、今日は玉露で、最高に優雅なひとときを過ごしませんか?
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 代名詞である玉露やかぶせ茶、そして抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)などが代表格。 […]
[…] 玉露: 収穫前に20日ほど日光を遮って(被覆栽培)育てられる、箱入り娘。これにより青葉アルコールの生成が抑えられる代わりに、「ジメチルスルフィド」という成分が増え、「覆 […]