古帛紗(こぶくさ)とは?茶道の隠れた名脇役
茶道の世界へようこそ!お抹茶にお菓子、美しいお道具の数々…そんな華やかな舞台の裏で、キラリと光る名脇役がいるのをご存知でしょうか?
その名も「古帛紗(こぶくさ)」。
なんだか古文書のような名前ですが、実はとてもおしゃれで奥深い、茶道を楽しむためのキーアイテムなのです。
古帛紗とは、だいたい縦横15cm×16cmほどの小さな布のこと。主に裏千家流の茶道で使われ、お茶をいただく際や、大切な茶道具を拝見する際に敷物として活躍します。
一見すると「ただの小さな布?」と思うかもしれませんが、その一枚一枚には職人の技と茶人のこだわりがギュッと詰まっています。
日本茶アドバイザーパトラッシュ♂「茶道はまだよくわからないけど、素敵な和の小物には興味がある!」という方、まずはこの古帛紗から茶道沼に足を踏み入れてみませんか?
帛紗(ふくさ)との違いは?
茶道初心者が最初にぶつかる壁、それが「帛紗(ふくさ)」と「古帛紗(こぶくさ)」の違いです。
その違いを、以下の表で一目瞭然にしてみましょう。
| 項目 | 古帛紗(こぶくさ) | 帛紗(ふくさ) |
| 主な用途 | 濃茶を飲むときや道具を拝見するときの敷物 | 棗(なつめ)や茶杓などを清めるための道具 |
| 大きさ | 約15cm × 16cm | 約28cm四方(一回り大きい) |
| 厚み・硬さ | 厚手でハリがある | 薄手でしなやか |
| 主な素材 | 名物裂(めいぶつぎれ)などの絹織物 | 羽二重(はぶたえ)などの無地の絹 |
| 見た目 | 多彩な柄や文様がある | 基本的に無地(朱、赤、紫など) |
| キャッチコピー | 敷いて敬意を示す「おもてなしマット」 | 拭いて清める「お清めハンカチ」 |
簡単に言うと、古帛紗は「敷く」ためのもの、帛紗は「拭く(清める)」ためのもの。



茶道ではどちらも懐(ふところ)に忍ばせておきますが、いざという時の出番が違うスーパーサブです。
古帛紗の役割と基本的な使い方
「たった一枚の小さな布が、そんなに大事なの?」と思いますよね。
もちろんです!
なぜ古帛紗が必要なの?その役割を解説
古帛紗がなぜ必要とされるのか、その合理的でスピリチュアルな理由を3つのポイントで解説します。
- 大切なものを守る「保護マット」として
- 亭主(おもてなしする側)への「敬意のしるし」として
- 場を清める「小さな結界」として
①大切なものを守る「保護マット」として
高価で繊細な茶碗や茶道具を、畳や床に直接置くのは避けたいもの。
古帛紗を一枚敷くことで、大切な道具を傷や汚れから守ります。
これは、美術館の展示品を丁寧に扱うような心遣いと同じです。
②亭主(おもてなしする側)への「敬意のしるし」として
亭主が心を込めて用意してくれたお茶や道具を、敬意を込めて丁寧に扱う。
その気持ちを形にしたのが古帛紗です。
古帛紗を敷いて道具を拝見することは、「この素晴らしいお道具を、大切に拝見させていただきます」という無言のメッセージになります。
③場を清める「小さな結界」として
古帛紗を広げることで、その上が清浄な空間となります。
神社のしめ縄のように、日常の世界と神聖な道具との間に「結界」を張るような意味合いも込められています。
ちょっと大げさかもしれませんが、それくらい神聖な役割を持っているのです。
【初心者向け】古帛紗の基本的な使い方
ここでは、裏千家流で最も基本的な使い方を2つのシーンに分けてご紹介します。
最初は少し緊張するかもしれませんが、慣れれば自然に美しい所作が身につきますよ。
- 濃茶をいただく時の使い方
- お道具を拝見する時の使い方
濃茶をいただくとき
濃茶(こいちゃ)は、数人で一つの茶碗を回し飲む、濃厚で格式高いお茶です。
この時に古帛紗が大活躍します。



熱い茶碗から手を守る鍋敷き代わり…というわけではありませんが、大切な茶碗を両手でしっかりと扱うための舞台装置の役割を果たします。
お道具を拝見するとき
お茶会の後には、使われた棗(なつめ:抹茶を入れる器)や茶杓(ちゃしゃく:抹茶をすくうさじ)などを拝見する時間があります。
ここでも古帛紗の出番です。
自分にぴったりの一枚を!古帛紗の選び方
古帛紗は、茶道で唯一と言っていいほど、自分の個性を表現できるアイテム。
せっかくなら、お気に入りの一枚を見つけたいですよね。
ここでは、自分にぴったりの古帛紗を選ぶための3つのポイントをご紹介します。
- 素材で選ぶ(正絹など)
- 柄・文様で選ぶ(季節感や格)
- 有名な裂地(きれじ)の種類
素材で選ぶ(正絹など)
古帛紗の素材は、ほとんどが正絹(しょうけん)、つまりシルク100%です。
正絹ならではの上品な光沢、なめらかな手触り、そして適度なハリが、古帛紗に品格を与えてくれます。
練習用として安価なポリエステル製のものもありますが、特別な一枚を持つならやはり正絹がおすすめです。



手に取った時の「キュッ」と鳴る絹鳴りの音も、気分を上げてくれますよ。
柄・文様で選ぶ(季節感や格)
古帛紗選びで最も楽しいのが、柄・文様選びです。デザインは実に多彩で、選ぶ柄によって季節感やお茶会の格を表すことができます。
- 春:桜、梅、藤、蝶など
- 夏:露草、流水、朝顔など涼しげな柄
- 秋:紅葉、菊、竜田川、虫籠など
- 冬:雪輪、松、南天など
- 通年:吉祥文様(宝尽くし、七宝など)、幾何学文様
格で選ぶ
格式の高いお茶会では、後述する「名物裂(めいぶつぎれ)」と呼ばれる由緒ある柄の古帛紗が好まれます。



逆に、気軽なお茶会では、動物柄やモダンなデザインで遊び心を表現するのも素敵です。
有名な裂地(きれじ)の種類
古帛紗に使われる生地を「裂地(きれじ)」と呼びます。
特に、歴史的に価値が認められた織物を「名物裂(めいぶつぎれ)」といい、茶人に長く愛されてきました。
有名な種類を知っておくと、古帛紗選びがさらに楽しくなります。
| 裂地の種類 | 特徴 |
| 金襴(きんらん) | 金糸を織り込んだ、豪華で格調高い裂地。お祝いの席にもぴったり。 |
| 緞子(どんす) | 異なる織り方で地と文様を表現した、光沢が美しい裂地。 |
| 間道(かんどう) | 縞(しま)模様が特徴的な裂地。すっきりとした粋な印象。 |
| 紹巴(しょうは) | しなやかで扱いやすく、緯糸(よこいと)の密度が高いため繊細な柄が表現できる。 |
まるで歴史上の人物と友達になるような感覚で、裂地を選んでみるのも一興です。
流派による違いはある?
ただし、流派を問わず、道具を拝見する際に敬意を示すために古帛紗を用意した方が丁寧とされる場面もあります。



まずはご自身の流派の先生に確認してみるのが一番確実です。
古帛紗はどこで買える?
「こんなに素敵な古帛紗、どこで手に入るの?」と思ったら、以下の場所を探してみましょう。
- 茶道具専門店
品揃えが最も豊富で、店員さんに相談しながら選べるのが魅力です。実店舗なら、実際に手に取って質感や色味を確かめられます。
- 百貨店の呉服・茶道具売り場
デパート内にあるためアクセスしやすく、質の良いものが揃っています。ギフト選びにもおすすめです。
- オンラインショップ
Amazon、楽天市場などの大手ECサイトや、茶道具専門店のオンラインショップでも購入できます。たくさんのデザインを一度に比較できるのがメリットですが、色味が写真と実物で若干異なる場合がある点には注意しましょう。
- 骨董市・アンティークショップ
思わぬ掘り出し物や、一点もののヴィンテージ裂地を使った古帛紗に出会える可能性があります。宝探し感覚で楽しめます。
価格は、ポリエステル製なら1,000円台から、正絹の一般的なもので3,000円~8,000円程度、人間国宝が手掛けたものや希少な裂地を使ったものになると数万円以上するものまで様々です。まずは気に入った柄を数枚揃えて、お茶会や季節に合わせて使い分けるのがおすすめです。
大切に使うための保管・お手入れ方法
お気に入りの古帛紗は、長く大切に使いたいもの。正絹は非常にデリケートな素材なので、お手入れには少し注意が必要です。
保管方法
桐の箱などに入れるのが理想的です。
長期間使わない場合は、着物用の防虫剤を一緒に入れると安心です。
お手入れ方法
縮みや色落ち、風合いを損なう原因になります。
もし汚れてしまった場合は、固く絞った布で軽く叩くようにして汚れを移し取る程度に留めましょう。
ひどい汚れの場合は、呉服店や悉皆屋(しっかいや)さんなど、着物のクリーニングを専門にしているお店に相談するのが賢明です。
もっと楽しむ!古帛紗の魅力
古帛紗の魅力は、茶道のお作法に使うだけにとどまりません。
もっと自由に、もっと楽しく古帛紗と付き合ってみましょう!
お気に入りの柄で個性を表現
茶道のお稽古着は着物やシンプルな洋服が基本ですが、懐に忍ばせる古帛紗でさりげなく個性をアピールできます。
「その柄、素敵ですね」なんて、お茶会での会話のきっかけになることも。



季節に合わせた柄を選ぶのはもちろん、自分のラッキーカラーや、好きな動物、物語にちなんだ柄を選ぶのも楽しいですよ。
茶道以外での楽しみ方
古帛紗の美しいデザインを、茶道の中だけで楽しむのはもったいない!
日常の中で楽しむアイデアをいくつかご紹介します。
アクセサリーや小物の敷物として
お気に入りの指輪や時計を、帰宅後に古帛紗の上に置くだけで、特別なディスプレイに早変わりします。
小さな花瓶や一輪挿しの下に
テーブルや棚に古帛紗を敷き、その上に小さな花瓶を飾れば、空間がぐっと華やぎます。
人形の座布団として
小さなお雛様や五月人形、お気に入りのフィギュアの座布団にすると、驚くほどフィットして格が上がります。



このように、古帛紗はアイデア次第でインテリアの素敵なアクセントにもなります。
AFTERWORDS
茶道の隠れた名脇役、古帛紗。
それは単なる小さな布ではなく、亭主への敬意を表し、大切な道具を守り、そして使う人の個性を表現するための奥深いアイテムです。
最初は使い方に戸惑うかもしれませんが、お気に入りの一枚を見つければ、お稽古に通うのがもっと楽しみになるはず。
歴史ある名物裂からモダンで可愛らしい柄まで、その選択肢は無限大です。
ぜひあなただけの「最高の相棒」となる古帛紗を見つけて、茶道の世界をさらに豊かに楽しんでくださいね。
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