煎茶とは?
いちばん身近な日本茶の基本を知ろう
「ちょっと一息つきたいな」という時、多くの日本人が思い浮かべるのが温かいお茶ではないでしょうか。
その中でも「煎茶(せんちゃ)」は、私たちにとって最も身近な存在です。
しかし、「煎茶について詳しく説明して」と聞かれると、意外と言葉に詰まってしまうかもしれません。
この記事では、そんな日常に溶け込んでいるけれど実は奥が深い「煎茶について」、日本茶の素人さんにも分かりやすく、ユーモアを交えながらその魅力のすべてを徹底解説します!
そもそも「緑茶」と「煎茶」の違いって?
「緑茶と煎茶って、結局同じものでしょ?」これは、多くの人が抱く素朴な疑問です。結論から言うと、緑茶は大きなカテゴリー名で、煎茶はその中の一つの種類です。
お茶の葉は、摘んだ瞬間から発酵(酸化)が始まります。
この発酵を加熱処理によって止めて作られるのが「不発酵茶」であり、これが「緑茶」と呼ばれます。
つまり、「緑茶」という大きなグループの中に、
などが所属しているイメージです。
日本で生産・消費される緑茶の大部分を占めるのが煎茶であり、まさに緑茶界のエース的存在と言えるでしょう。
煎茶の味と香りの特徴
爽やかな香りと程よい渋み
煎茶の最大の魅力は、なんといってもその爽やかな香りと、旨味・甘味、そして心地よい渋みが織りなす絶妙なバランスです。
この親しみやすい味わいこそが、煎茶が長年多くの人々に愛され続けている理由なのです。
緑茶を図解で紹介
煎茶とほかのお茶との違い
「緑茶」という大家族には、煎茶以外にも個性豊かな兄弟たちがたくさんいます。
ここでは、特に混同されがちな「玉露」「かぶせ茶」「ほうじ茶」「番茶」と煎茶の違いを、栽培方法や製造工程の観点から見ていきましょう。
お茶の種類 | 栽培方法 | 製造工程・収穫時期 | 味・香りの特徴 | 例えるなら… |
煎茶 | 日光をたっぷり浴びせる(露地栽培) | 蒸して揉む | 爽やかな香りと程よい渋み・旨味のバランス型 | 元気で活発なクラスの人気者 |
玉露 | 収穫前約20日間、日光を遮る (被覆栽培) | 蒸して揉む | 「覆い香」と濃厚な旨味・甘味 | 箱入りで大切に育てられたお嬢様 |
かぶせ茶 | 収穫前約1週間、日光を遮る(被覆栽培) | 蒸して揉む | 煎茶の爽やかさと玉露の旨味を併せ持つ | 煎茶と玉露のいいとこ取りをした優等生 |
ほうじ茶 | 煎茶と同じ (露地栽培) | 煎茶や番茶などを強火で焙煎(ほうじる) | 香ばしい香りと、すっきりとした味わい | こんがり日焼けした香ばしいナイスガイ |
番茶 | 煎茶と同じ (露地栽培) | 時期外れに収穫した硬い葉や茎などを使う | さっぱりとしていて、クセのない日常的な味わい | 気取らない、普段着の付き合いができる友人 |
「玉露」との違いは栽培方法
煎茶と玉露の決定的な違いは、日光を当てるか、遮るかという栽培方法にあります。
煎茶が太陽の光をさんさんと浴びて育つのに対し、玉露は収穫前の約20日間、よしず棚などで茶園を覆い、日光を制限して育てられます。
お茶の旨味成分「テアニン」は、日光を浴びると渋み成分「カテキン」に変化します。
そのため、日光を遮られた玉露はカテキンの生成が抑えられ、テアニンを豊富に含んだ、とろりとした濃厚な旨味と甘みが生まれるのです。
「かぶせ茶」との違いは日光を遮る期間
「かぶせ茶」は、煎茶と玉露のちょうど中間に位置するお茶です。
玉露と同様に日光を遮って栽培しますが、その期間が収穫前の約1週間と短いのが特徴です。
これにより、煎茶の持つ爽やかな香りを残しつつ、玉露のようなまろやかな旨味も感じられる、まさに“いいとこ取り”の味わいが生まれます。
煎茶では少し物足りないけれど、玉露は個性が強すぎると感じる方にぴったりの選択肢です。
「ほうじ茶」「番茶」との違いは製造工程と収穫時期
ほうじ茶や番茶と煎茶の違いは、主に最後の仕上げ(製造工程)と収穫される時期にあります。
ほうじ茶
煎茶や番茶などを強火で焙(ほう)じて作られます。
この焙煎工程により、カテキンやカフェインが減少し、独特の香ばしい香りが生まれます。

苦みや渋みが少なく、就寝前や胃腸が弱っているときにもおすすめです。
番茶
主に夏以降に収穫された、成長して硬くなった葉や茎から作られるお茶を指します。
さっぱりとした味わいでカフェインも少ないため、日常的にゴクゴク飲むのに適しています。
実は奥が深い!煎茶の主な種類
一口に「煎茶」と言っても、製造工程や品質によっていくつかの種類に分けられます。
ここでは代表的な「普通煎茶」と「深蒸し煎茶」、そして品質による違いについて解説します。
普通煎茶:バランスの取れた爽やかな味わい
「浅蒸し煎茶」とも呼ばれ、茶葉を蒸す時間が30秒~40秒程度の標準的な製法で作られた煎茶です。
- 特徴: 茶葉の形が針のように細長く、美しく整っています。
- 味わい: お茶本来のフレッシュで爽やかな香りが際立ち、旨味と渋みのバランスが取れた、すっきりとした味わいです。黄金色に近い透明感のある水色が楽しめます。
補足:普通煎茶と上級煎茶の違いは?
煎茶の「上級」や「並」といったランクは、主に茶葉が摘み取られる時期によって決まります。



私の中でも地域によって、この違いは、曖昧ですが、普通煎茶は、一番茶を使う場合もあるが、二番茶・三番茶が含まれることもあるそうです。
上級煎茶は一番茶のみを使用しています。



あまり深く考えたくないですが、美味しいお茶っ葉の量増しの為に2番茶などをブレンドした物が普通もしくは中級煎茶という認識ですね。
深蒸し煎茶
濃い緑色でまろやかな味わい
普通煎茶の約2倍の時間をかけて茶葉をじっくりと蒸して作られるのが「深蒸し煎茶」です。
- 特徴: 長く蒸すことで茶葉の組織が柔らかくなり、見た目は少し粉っぽく細かくなります。
- 味わい: 渋みや青臭さが抑えられ、コクのあるまろやかな味わいです。
茶葉が細かいため、お茶の成分が抽出しやすく、濃い緑色の水色が特徴。
お湯に溶け出しにくい健康成分も茶葉ごと摂取しやすいというメリットがあります。
初心者でも簡単!美味しい煎茶の淹れ方パーフェクトガイド
「お茶を淹れるのは作法が難しそう…」と感じる必要はありません。
いくつかの簡単なポイントを押さえるだけで、誰でも驚くほど美味しい煎茶を淹れることができます。
まずはコレを準備!基本的な道具と茶葉の量
特別な道具は不要です。ご家庭にあるもので始めましょう。
- 急須
- 茶碗(人数分)
- 茶葉
- お湯(一度沸騰させたもの)
【美味しい淹れ方の目安(2人分)】
上級煎茶 | 普通煎茶・深蒸し煎茶 | |
茶葉の量 | 5g(ティースプーン約2杯) | 5g(ティースプーン約2杯) |
お湯の量 | 約160ml | 約200ml |
お湯の温度 | 70℃前後 | 80℃~90℃ |
蒸らし時間 | 約1分 | 約30秒~40秒 |
美味しくなる淹れ方4ステップ
やかんでお湯を沸騰させたら、蓋を開けて1〜2分沸かし続けてカルキ臭を抜きます。
上級煎茶(70℃にしたい場合): 沸騰したお湯を別の器(湯冷まし)に移し、さらにそこから茶碗に注ぐと、おおよそ適温になります。
茶碗を温めたお湯を急須に注ぎ、計量した茶葉を入れます。こうすることでお湯の温度を下げすぎずに済みます。
茶葉の上からお湯を注ぎ、蓋をして静かに蒸らします。茶葉がゆっくりと開いていくのを待ちましょう。
※時間は上の表を参考にしてください。
複数の茶碗に注ぐ際は、少量ずつ「1→2→3」「3→2→1」と往復するように注ぎ分ける「廻し注ぎ」で、濃さを均一にします。
そして何より大切なのが、「ゴールデンドロップ」と呼ばれる最後の一滴まで絞り切ること。



この一滴に旨味が凝縮されています。
二煎目、三煎目も楽しむコツ
美味しい煎茶は一度きりではもったいない!味の変化を楽しみましょう。
- お湯の温度: 一煎目よりも10℃ほど高いお湯を使います。
- 蒸らし時間: 茶葉はすでに開いているため、待ち時間はほぼ不要です。お湯を注いだら、すぐに注ぎ分けましょう。



一煎目で甘みと旨味、二煎目で爽やかな渋み、三煎目でキリッとした苦味といったように、変化する味わいを存分にお楽しみください。
どうしてもうまく淹れれない時は、湯の量を減らしてみよう。
煎茶に含まれる成分と期待される効能
煎茶は美味しいだけでなく、私たちの健康をサポートしてくれる嬉しい成分が豊富です。
カテキン:生活習慣病予防や抗菌作用
カテキンは、お茶の渋みのもととなる成分で、ポリフェノールの一種です。
日光を浴びることで生成されるため、露地栽培の煎茶に豊富に含まれています。
強い抗酸化作用で知られ、生活習慣病の予防や、抗菌・抗ウイルス作用などが期待されています。
カテキンは高温のお湯でより多く抽出されます。
ビタミンC:美容と健康の維持
煎茶には、レモンの数倍ともいわれるビタミンCが含まれています。
通常、ビタミンCは熱に弱い性質がありますが、煎茶に含まれるビタミンCはカテキンによって保護されるため、熱いお湯で淹れても壊れにくいのが大きな特徴です。
肌の健康維持や免疫機能のサポートに役立ちます。
AFTERWORD
煎茶を知って、お茶のある暮らしをもっと楽しもう
「煎茶について」の旅、いかがでしたでしょうか。
煎茶が緑茶ファミリーの中心的な存在であること、玉露やほうじ茶といった個性的な兄弟がいること、そして少しのコツで驚くほど美味しくなること。
知れば知るほど、煎茶の世界は奥深く、魅力的です。
普通煎茶の爽やかさ、深蒸し煎茶のまろやかさ、特別な日の上級煎茶。
その日の気分やシーンに合わせてお茶を選び、丁寧に淹れる時間は、きっとあなたの日常に豊かな彩りと、ホッと一息つける癒やしをもたらしてくれます。
さあ、今日からあなたも「お茶のある暮らし」を、もっと深く楽しんでみませんか?
その他の日本茶についての記事はこちら
-
【玄米茶】:「ほっとする和の味わい」特徴・効能・美味しい淹れ方
-
【不発酵茶】:発酵しないからこそ香る、日本茶の美学と緑茶の原点
-
【煎茶入門】:普通煎茶と上級煎茶の違いと日本の伝統!心の一杯
-
【あさつゆ品種】:朝露に光る緑の一杯!特徴と美味い淹れ方を紹介
-
【さえみどり品種】:お茶好き必見!爽やかで冴えた緑の旨味の一杯
-
【ゆたかみどり品種】:鹿児島生まれの銘茶!緑のゆたかさを持つ茶
-
【やぶきた品種】:日本茶の王道!全国に広がる日本茶の主役を紹介
-
【茶杓(ちゃしゃく)】:竹が語る侘び寂びの美学、役割と形の魅力
-
【ばん茶】:昔から飲まれている日常のヒーロー的お茶の魅力とパワー
-
【玉露(ぎょくろ】:茶の頂点!一煎に宿る日本の粋と至福の一滴
-
【碾茶(てんちゃ)】:知られざる茶葉の原点、日本茶の影の主役!
-
【知覧茶(ちらんちゃ)】:緑の宝石と言われる南国鹿児島が誇る銘茶
-
【溝部茶】:清流の里が育む深みある至高の味わいと香りと旨み
-
【浅蒸し茶】お茶本来の味わいを楽しみたいならこれを選ぶべき?
-
【川辺茶(かわなべちゃ)】:鹿児島の名産・味わい・いかした飲み方
-
【頴娃茶(えいちゃ)】:南薩摩が誇る風土と濃厚な旨みの茶文化
-
【伊勢茶:全国3位のお茶処、三重の美味しいお茶の味と香り】
-
【美作番茶】:伝統が息づく、美作風土と匠の芳醇なるお茶の世界
-
【京番茶】:京都の風情と燻製香がクセになる!?京番茶の魅力紹介
-
【三年番茶】:三年熟成の力。低カフェインで心と体にやさしい番茶
-
【阿波番茶】:酸っぱい?いや旨い!徳島の宝をイントロダクション
-
【ほうじ茶】:香ばしさの美学。香りが誘う至福の時間をお探しなら
-
【茎茶(くきちゃ):爽やかな香りと旨みの余韻、その魅力を紹介】
-
【ベニフウキ:花粉症に悩む方にオススメなお茶、その秘密の成分】
コメント