【釜炒り製玉緑茶】:香ばしさと旨みが際立つ伝統製法の秘密と魅力

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日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

お茶好きの皆さん、こんにちは!「いつもの煎茶も美味しいけど、何か新しいお茶にも挑戦してみたい…」そう思ったことはありませんか?

そんな探求心旺盛なあなたに、今回は日本茶の中でも特に個性的で希少な存在、「釜炒り製玉緑茶(かまいりせいたまりょくちゃ)」の魅力をご紹介します。

一度味わうと忘れられない香ばしい「釜香(かまか)」と、黄金色に輝く美しい水色(すいしょく)。

この記事を読めば、あなたもきっと釜炒り製玉緑茶の虜になるはず。さあ、奥深いお茶の世界へ一緒に旅立ちましょう!

目次

釜炒り製玉緑茶とは?

黄金色の水色と「釜香」が魅力の希少な日本茶

釜炒り製玉緑茶とは、摘み取った生葉の酸化を止める「殺青(さっせい)」という工程で、一般的な日本茶のように蒸気で「蒸す」のではなく、熱した釜で「炒る」ことで作られる緑茶です。

この釜で炒る製法により、他のお茶にはない独特の香ばしい「釜香(かまか)」が生まれ、渋みが少なくすっきりとした味わいが特徴となります。

また、茶葉の形をまっすぐに整える「精揉(せいじゅう)」という工程を行わないため、茶葉が勾玉(まがたま)のようにくるんと丸まっているのも大きな特徴

この見た目から「玉緑茶」や「ぐり茶」とも呼ばれています。

なぜ希少?日本茶における釜炒り茶の立ち位置

実は、現在の日本で生産される緑茶の99%以上は蒸気で加熱する「蒸し製」です。

釜炒り製法は九州の一部の地域で受け継がれているのみで、その生産量は日本茶全体の1%にも満たない、幻ともいえるほど希少なお茶なのです。

かつて中国から伝わり、日本でも行われていた釜炒り製法ですが、江戸時代に効率的な蒸し製法が発明されると、手間と高度な技術が必要な釜炒り茶は徐々に作られなくなりました。

今では、その伝統製法を情熱をもって守り続ける生産者の方々によって、この貴重な一杯が私たちに届けられています。

「玉緑茶」と「ぐり茶」の違いとは?

「玉緑茶」と「ぐり茶」、どちらも丸い茶葉の愛称ですが、厳密には少し違いがあります。お茶オタクの豆知識として覚えておくと面白いかもしれません。

名称主な製法特徴主な産地
玉緑茶(たまりょくちゃ)釜炒り製・蒸し製茶葉が勾玉状に丸まっているお茶の総称。九州地方(釜炒り製)、静岡県(蒸し製)など
ぐり茶蒸し製もともとは静岡県伊豆地方の特産品である「蒸し製玉緑茶」の愛称。「ぐりっ」とした見た目から名付けられた。静岡県伊豆地方

まとめると、「玉緑茶」という大きなカテゴリの中に「釜炒り製」と「蒸し製」があり、「ぐり茶」は主に「蒸し製玉緑茶」を指す愛称、ということです。

この記事では、特に香りが特徴的な「釜炒り製玉緑茶」の魅力に深く迫っていきます。

釜炒り製玉緑茶の3つの特徴

煎茶との違いを徹底比較

では、釜炒り製玉緑茶は、私たちが普段よく飲む煎茶と具体的に何が違うのでしょうか?

その秘密はやはり「製法」に隠されていました。

違いが一目でわかる比較表をご覧ください。

特徴釜炒り製玉緑茶煎茶(一般的な蒸し製)
製法(殺青熱した釜で「炒る」高温の蒸気で「蒸す」
香り香ばしい「釜香(かまか)」若葉のような爽やかな香り
味わい渋みが少なく、すっきりクリア旨味と渋みの調和
水色(すいしょく)透き通った黄金色緑色がかった黄色
茶葉の形状勾玉のような丸い形まっすぐに伸びた針状
3つの特徴
  • 香り:製法が生み出す独特の「釜香(かまか)」
  • :渋みが少なく、すっきりとした味わい
  • 水色:透き通った黄金色の水色(すいしょく)

特徴1:製法が生み出す独特の「釜香(かまか)」

釜炒り製玉緑茶の最大の魅力は、なんといってもこの「釜香(かまか)」です。

約300℃の高温の釜で炒られることで生まれる、まるで炒りたての豆やナッツを思わせるような、こうばしく甘い香り

この香りは、蒸して作られる煎茶では決して味わうことのできない、釜炒り茶だけの特別なアイデンティティです。

特徴2:渋みが少なく、すっきりとした味わい

釜で炒る加熱方法は、渋み成分であるカテキンの働きを穏やかにするため、蒸し製に比べて渋みや苦みが少なく、後味のキレが良いすっきりとした味わいになります。

お茶の渋みが少し苦手という方でも、美味しく楽しめるクリアな飲み口が魅力です。

特徴3:透き通った黄金色の水色(すいしょく)

釜炒り製玉緑茶を淹れてみると、その美しい水色に誰もが心を奪われるはずです。

煎茶のフレッシュな緑色とは対照的に、光に透かすとキラキラと輝く美しい黄金色

この見た目の華やかさも、お茶の時間を特別なものにしてくれる大切な要素です。

釜炒り製玉緑茶の歴史と2大産地

釜炒り製法は、15世紀頃に中国大陸から日本へ伝わったとされています。

そんな歴史ある釜炒り茶の伝統を今に伝えるのが、九州が誇る二大産地です。

2大産地
  • 佐賀県の「嬉野茶(うれしのちゃ)
  • 熊本・宮崎の「青柳茶(あおやぎちゃ)

主な産地①:佐賀県の「嬉野茶(うれしのちゃ)」

日本三大美肌の湯としても名高い佐賀県・嬉野温泉。

この地で作られる「嬉野茶」は、日本における釜炒り茶の代名詞的存在です。

15世紀にその歴史が始まり、中国から伝わった釜と製法がこの地のお茶文化を花開かせました。

斜めに設置された独特の「傾斜釜」で丁寧に炒り上げられるのが特徴です。

主な産地②:熊本・宮崎の「青柳茶(あおやぎちゃ)」

神話の里として知られる宮崎県の高千穂郷・五ヶ瀬川流域や、隣接する熊本県山都町などで作られる釜炒り茶は「青柳茶(あおやぎちゃ)」と呼ばれます。

こちらは地面と水平に設置する「平釜」を使うのが特徴。

山間地ならではの寒暖差が、茶葉に豊かな香りと深い味わいをもたらします。

【実践】釜炒り製玉緑茶のポテンシャルを引き出す淹れ方

せっかくの希少な釜炒り製玉緑茶。その真価を最大限に引き出すための、簡単で美味しい淹れ方をご紹介します。

ポイントは「少し高めの温度」です!

基本の淹れ方(一煎目)

日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

釜香を存分に楽しむため、少し熱めのお湯でさっと淹れるのがおすすめです。

STEP
お湯の準備

沸騰したお湯を一度湯呑みに注ぎ、湯呑みを温めると同時に少しだけお湯の温度を下げます(80℃〜90℃が目安)。

STEP
茶葉を入れる

急須に茶葉を入れます。1人分ティースプーンに軽く2杯(約3〜4g)が目安です。

STEP
お湯を注ぐ

湯呑みで適温になったお湯を、急須の茶葉に注ぎます。

STEP
蒸らす

蓋をして、約1分待ちます。香りが立つ瞬間を楽しみましょう。

STEP
注ぎ切る

濃さが均一になるよう、各湯呑みに少しずつ注ぎ分ける「廻し注ぎ」をします。

そして、急須にお湯が残らないよう「最後の一滴」までしっかりと注ぎ切ることが、二煎目を美味しく淹れる最大のコツです。

二煎目以降の楽しみ方

日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

釜炒り茶は「煎(せん)が効く」、つまり何煎も美味しく淹れられるのが嬉しい特徴です。
かなり抽出量がきくので、コスパのいいお茶といえますね。

2煎目以降のコツ
  • 二煎目: 一煎目よりも熱いお湯(90℃以上)を注ぎ、蒸らし時間は置かずにすぐに注ぎ出します。
    一煎目とはまた違う、キリッとした力強い味わいが楽しめます。
  • 三煎目以降:同様に熱いお湯で、お好みの濃さになるよう蒸らし時間を調整しながら楽しんでください。
    淹れるたびに変化していく味と香りのグラデーションをじっくりと味わうのも一興です。

水出し・氷出しで楽しむ釜炒り茶

釜炒り製玉緑茶は、夏場にぴったりの水出しや氷出しでも、その個性を発揮します。

簡単冷茶法
  • 水出し:ポットに茶葉と水を入れ、冷蔵庫で数時間置くだけ。
    渋みがほとんど出ず、ゴクゴク飲めるまろやかな甘みと香りが楽しめます。
  • 氷出し: 急須にたっぷりの氷と茶葉を入れ、氷が自然に溶けるのを待ちます。
    時間はかかりますが、お茶の旨味と甘みが凝縮された、まるで玉露のような極上の一杯を味わえます。
日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

ちょっとだけお湯淹れてから冷水での水出しすることで、カテキンの爽やかさがアップする淹れ方もおすすめだよ。

もっと楽しむ!

釜炒り製玉緑茶の選び方とペアリング

釜炒り製玉緑茶の魅力にハマったら、次は自分好みの一杯を見つけて、さらに楽しみの幅を広げてみましょう。

茶葉の選び方のポイント

3つのポイント
  • 形状と色:艶があり、しっかりと丸まった濃い緑色の茶葉を選びましょう。
  • 香り:パッケージを開けた時に、釜炒り茶特有の香ばしい「釜香」がしっかりと感じられるものが良質です。
  • 産地で選ぶ:「嬉野茶」と「青柳茶」では、釜の形状や作り手のこだわりによっても風味が異なります。ぜひ飲み比べて、お気に入りの産地を見つけてみてください

おすすめのペアリング(お菓子・食事)

すっきりとした香ばしさを持つ釜炒り製玉緑茶は、驚くほど多くの食べ物と相性が良い万能選手です。

お菓子とのペアリング
  • 和菓子: どら焼きや羊羹など、あんこの優しい甘さが釜香と絶妙にマッチします。
  • 洋菓子:バタークッキーやフィナンシェ、ナッツを使ったタルトなど、香ばしい風味同士が互いを引き立て合います。
日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

けっこうバター系的なギトギトお菓子にオススメです♡

食事とのペアリング
  • 中華料理や揚げ物: 油を使った料理の後味をさっぱりと洗い流してくれます。
  • 香ばしいおつまみ: 醤油味のおせんべいや、バター醤油ポップコーンなども意外な好相性です。

AFTERWORD

今回は、日本茶の中でも特に個性的で希少な「釜炒り製玉緑茶」について、その魅力や楽しみ方を詳しくご紹介しました。

まとめ
  • 釜で炒る製法が生む、独特の「釜香」
  • 渋みが少なく、すっきりとしたクリアな味わい
  • 美しく透き通った黄金色の水色
  • 主な産地は佐賀の「嬉野茶」と熊本・宮崎の「青柳茶」
  • 熱めのお湯で淹れるのが、美味しさを引き出すコツ

この記事をきっかけに、あなたが釜炒り製玉緑茶の新たなファンになっていただけたら、これほど嬉しいことはありません。

日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

いつものお茶時間に、ほんの少しの冒険を。歴史と職人の技が詰まったこの香ばしい一杯が、あなたの日常をより豊かに彩ってくれるはずです。ぜひお近くの専門店やオンラインストアで、お気に入りの釜炒り製玉緑茶を見つけてみてください。

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