【蒸し製玉緑茶】:形・香り・味の三位一体!これが日本茶の『粋』

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蒸し製玉緑茶(ぐり茶)とは?

お茶オタクも唸る、その魅力に迫る!

「いつもの煎茶も美味しいけど、何か新しいお茶にも挑戦してみたい…」「渋いのは苦手だけど、緑茶の甘みやコクは大好き!」

日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

そんな、探求心あふれるお茶好きのあなたに、ぜひとも味わっていただきたいのが「蒸し製玉緑茶(むしせいたまりょくちゃ)」です。

一度飲めば、そのまろやかな味わいと魅力に、きっと心を奪われるはず。

この記事では、通称「ぐり茶」とも呼ばれる蒸し製玉緑茶の奥深い世界へご案内します。

なぜ「ぐり茶」と呼ばれるの?

「蒸し製玉緑茶」という名前は、少し長くて覚えにくいかもしれませんね。

でも、ご安心を。親しみを込めてぐり茶」と呼ばれています。

この可愛らしい愛称の由来は、茶葉の見た目にあります。

一般的な煎茶がまっすぐな針のような形をしているのに対し、ぐり茶は製造工程で形を整えないため、茶葉が「ぐりっ」と丸まった、まるで勾玉(まがたま)のような形をしています。

この特徴的な形状から「ぐり茶」という愛称が定着しました。

蒸し製玉緑茶の歴史

輸出用のお茶として誕生

実はこの「ぐり茶」、意外にも国際的なバックグラウンドを持っています。

その歴史は1930年頃に遡り、当時はソビエト連邦(現在のロシア)への輸出向けに開発されたのが始まりです。

当時ロシアでは、中国式の釜で炒って作られる丸い形状の緑茶(釜炒り茶)が好まれていました。

そこで、日本の優れた「蒸し」の技術を使いつつ、見た目を釜炒り茶に似せて開発されたのが「蒸し製玉緑茶」だったのです。

輸出が落ち着いた後は国内で愛されるようになり、特に静岡県の伊豆地方や九州地方を代表するお茶の一つとなりました。

他の緑茶との違いを徹底比較!

「ぐり茶がユニークなのは分かったけど、煎茶や他のお茶とは具体的に何が違うの?」そんな疑問にお答えするため、代表的な緑茶との違いを表で分かりやすく比較してみましょう。

煎茶との違い:製造工程と味わい

蒸し製玉緑茶と最も比較されるのが、日本茶の王道「煎茶」です。最大の違いは、茶葉の形をまっすぐに整える「精揉(せいじゅう)」という工程の有無にあります。

比較項目蒸し製玉緑茶(ぐり茶)煎茶
見た目ぐりっと丸まった勾玉状ピンと伸びた針状
製造工程精揉(形を整える)工程がない精揉工程がある
味わい渋みや苦味が少なく、まろやかで甘みが強い渋み・甘み・旨みのバランスが良い
香り濃厚で豊かな香り爽やかで清涼感のある香り

精揉工程がないことで、茶葉への物理的な負担が少なくなり、お茶の成分が穏やかに抽出されます。

その結果、渋みや苦みが抑えられ、甘みとコクが際立つまろやかな味わいが生まれるのです。

日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

渋いお茶が苦手な方でも、ぐり茶なら美味しく楽しめるでしょう。

釜炒り製玉緑茶との違い

加熱方法と香り

見た目がそっくりな兄弟分に「釜炒り製玉緑茶」があります。

こちらも精揉工程がないため丸い形をしていますが、最初の加熱方法が決定的に異なります。

比較項目蒸し製玉緑茶(ぐり茶)釜炒り製玉緑茶
加熱方法蒸気で「蒸す」(日本茶の主流)釜で「炒る」(中国茶の製法)
香り青々しくフレッシュな香り「釜香(かまか)」と呼ばれる香ばしい香り
水色(すいしょく)濃い緑色透き通った黄金色
味わいまろやかな甘みとコクさっぱりとしていて、後味すっきり

蒸して作る「蒸し製玉緑茶」は、茶葉本来のフレッシュな香りと濃厚なうま味を楽しめるのが特徴です。

一方、釜で炒る「釜炒り製玉緑茶」は、炒りたての豆のような香ばしい「釜香(かまか)」が魅力。

見た目は似ていても、香りと味わいは全く異なる個性を持っています。

蒸し製玉緑茶の主な産地

蒸し製玉緑茶は、主に以下の地域で盛んに生産されています。

名産地
  • 静岡県伊豆地方:「伊豆のぐり茶」として全国的に有名で、温泉地のお土産としても人気を博しています。
    温暖な気候が育む、まろやかな味わいが特徴です。
  • 九州地方(佐賀県、長崎県、熊本県など): 特に佐賀県の嬉野(うれしの)は、釜炒り茶と並んで蒸し製玉緑茶の産地としても知られています。
    また、熊本県は玉緑茶の生産量が全国トップクラスです。
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産地の気候や土壌、作り手のこだわりによっても味わいは変わります。様々な産地のぐり茶を飲み比べて、自分だけのお気に入りを見つけるのもお茶の醍醐味。

蒸し製玉緑茶の美味しい淹れ方

せっかくの「ぐり茶」、そのポテンシャルを最大限に引き出す淹れ方をご紹介します。

渋みが出にくいため淹れやすいお茶ですが、少しのコツで格段に美味しくなります。

用意するもの
  • ぐり茶の茶葉: 大さじ1杯(約6g)
  • お湯: 約200ml
  • 急須
  • 湯呑み
  • 湯冷まし(なければ湯呑みで代用OK)

美味しく淹れるための3ステップ

STEP
お湯を冷まして旨みを引き出す!

 沸騰したお湯を一度、湯冷まし(または湯呑み)に移し、80℃くらいまで冷まします。

高温で淹れると渋みが出やすくなるため、このひと手間が甘みを引き出す秘訣です。

器にお湯を移すたびに約10℃温度が下がると覚えておくと便利です。

STEP
急須でじっくり茶葉を開かせる

    急須に茶葉を入れ、冷ましたお湯を注ぎます。蓋をして、約1分ほど静かに待ちましょう。

日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

急須の中で丸まった茶葉がゆっくりと開いていくのを待つ時間も、お茶の楽しみの一つです。

STEP
最後の一滴(ゴールデンドロップ)まで注ぎ切る

    濃さが均一になるように、少しずつ交互に湯呑みに注ぎ分けます(廻し注ぎ)。
そして最も重要なのが、うま味が凝縮された最後の一滴(ゴールデデンドロップ)までしっかりと注ぎ切ること。
これにより、二煎目も美味しくいただけます。

二煎目以降の楽しみ方

ぐり茶は二煎、三煎と味わいの変化を楽しめるのも魅力です。

二煎目:一煎目よりも少し高めの90℃くらいのお湯を使い、蒸らし時間は10~20秒ほどでサッと淹れます。
一煎目とは違う、すっきりとした味わいが楽しめます。
三煎目:熱湯で淹れて、ほうじ茶のような香ばしさを楽しむのもおすすめです。

こんな人におすすめ!

蒸し製玉緑茶の選び方

ぐり茶はこんな方にオススメ
  • 渋いお茶が苦手な方:ぐり茶のまろやかな甘みは、緑茶のイメージを変えるきっかけになるかもしれません。
  • いつものお茶に変化を求めているお茶好きな方:煎茶との違いをテイスティングしながら楽しむ、ディープな世界が待っています。
  • 珍しいお茶でゲストをもてなしたい方:丸い茶葉の見た目は、お茶の時間の会話を弾ませてくれるでしょう。
  • 食事と一緒にお茶を楽しみたい方: 渋みが穏やかなので、料理の味を邪魔せず、口の中をさっぱりとさせてくれます。

選ぶ際は、「普通蒸し」か「深蒸し」かもチェックポイントです。

日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

さっぱりした味わいが好きなら普通蒸し、より濃厚なコクと緑色の水色を楽しみたいなら深蒸しタイプがおすすめです。

保存方法と注意点

お茶はとてもデリケートな食品です。美味しさを長持ちさせるためには、正しい保存方法が欠かせません。

お茶の品質を損なう5つの敵は「湿度・酸素・光・高温・移り香」です。 

これらから茶葉をいかに守るかが、美味しさを保つ秘訣になります。

【未開封の場合】

購入した状態のまま、冷蔵庫や冷凍庫で保存するのがおすすめです。

ただし、庫内から出してすぐに開封するのは絶対にNG!温度差で袋の表面に結露が生じ、茶葉が湿気る原因になります。

必ず、飲む前日に冷蔵庫から出し、一晩かけて常温に戻してから開封してください。

【開封後の場合】

一度開封したお茶を冷蔵庫に入れるのは避けましょう。

冷蔵庫内の他の食品の匂いを吸収してしまい、お茶本来の風味が損なわれてしまいます。

開封後の保存法と注意点
  • 密閉容器で光を遮断: 茶筒や、気密性の高いチャック付きの袋など、光を通さず、しっかりと密閉できる容器に移し替えましょう。
  • 冷暗所で常温保存: 直射日光が当たらず、涼しい場所(食器棚など)で保管するのが基本です。
  • 早めに飲み切る: 開封後は、空気に触れることで少しずつ酸化が進みます。美味しいうちに飲み切るのが一番です。できれば夏場は2週間、冬場でも1ヶ月程度で飲み切るようにしましょう
日本茶アドバイザーパトラッシュ♂

もし風味が落ちてしまったと感じたら、フライパンで軽く乾煎りして「自家製ほうじ茶」にするのもおすすめです。 
焦がさないように弱火でじっくり煎れば、香ばしいほうじ茶として最後まで美味しく楽しめます。

蒸し製玉緑茶に関するQ&A

Q1. 深蒸し茶とは違うのですか?

A1. カテゴリーが異なりますが、関係は深いです。

深蒸し茶」とは、製造工程における蒸し時間が長いお茶の総称です。

一方、「蒸し製玉緑茶」は、形を整える精揉工程がないという形状的な特徴で分類されます。

つまり、「深蒸し製法で作られた蒸し製玉緑茶」も存在するということです。

実際に、ぐり茶には深蒸しタイプも多く、より濃厚でまろやかな味わいを楽しむことができます。

AFTERWORD

くるんとした見た目が愛らしい「蒸し製玉緑茶(ぐり茶)」。

そのユニークな形は、渋みを抑え、茶葉本来のまろやかな甘みとコクを引き出すための、先人たちの知恵と工夫の結晶でした。

まとめ
  • 特徴: ぐりっと丸い見た目と、渋みが少なくまろやかな味わい
  • 歴史: 元々はロシアへの輸出用に開発された国際派
  • 違い: 煎茶とは「形を整える工程」の有無、釜炒り製とは「加熱方法」が異なる
  • 産地: 静岡県伊豆地方や九州地方が有名
  • 淹れ方: 80℃のお湯で1分じっくり待つのが美味しさの秘訣

いつものお茶とは一味違う、奥深い魅力を持つ蒸し製玉緑茶。

この記事を読んで少しでも興味が湧いたなら、ぜひ一度手に取ってみてください。きっとあなたのティータイムを、もっと豊かで楽しいものにしてくれるはずです。

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