鮮烈な香りと味わい!
お茶の「生茶」の奥深い世界へようこそ
いつものお茶に、ちょっぴりマンネリを感じていませんか?

「もっと茶葉の個性を感じたい!」「誰も知らないようなディープなお茶を飲んでみたい!」そんな探求心あふれる “お茶オタク” のあなたに、ぜひとも知っていただきたいのが、お茶の「生茶(なまちゃ)」の世界です。
「生」と聞くと、ワイルドで荒々しいイメージが浮かぶかもしれませんね。
その直感、大正解です。
生茶は、一般的なお茶が必ず経験する「火入れ」という仕上げの工程をあえて行わない、いわばお茶界の“レアステーキ”。
茶葉が持つありのままの、むき出しの個性をダイレクトに味わえる、究極のお茶なのです。
この記事では、謎に包まれた「生茶」の正体から、その抗いがたい魅力、最高のポテンシャルを引き出す淹れ方、そして少しデリケートな注意点まで、掘り下げていきます。
「生茶」とは?
火入れをしない日本茶の真髄
日本茶における「生茶」とは、結論から言うと「火入れ(ひいれ)」という最終の加熱処理を行っていないお茶を指します。
私たちが普段楽しんでいる煎茶やほうじ茶などは、製造の最終段階で「火入れ」を行うことで、香ばしい香りを引き出し、長期間の保存に耐えられるように仕上げられています。
一方、生茶はこの火入れを行いません。



そのため、まるで摘みたての茶葉が呼吸しているかのような、生命力あふれる若々しい香りと味わいがそのまま封じ込められています。
まさにお茶の「すっぴん」状態、素材そのもので勝負するピュアなお茶です。
なぜ最近、お茶好きの間で「生茶」が注目されるのか?
近年、こだわりのお茶好きたちの間で「生茶」の人気がじわじわと高まっています。
その理由は、現代の食のトレンドとも深く関わっていると言われています。
- 希少性と限定感:生茶は火入れをしないため品質が変わりやすく、長期保存ができません。
だからこそ、主に新茶の時期など限られた期間しか味わえない希少性が、特別感を求めるお茶ファンの心を掴んでいます。 - テロワール(産地の個性)への関心:ワインの世界でよく使われる「テロワール」という言葉。
これは、土地の気候や土壌がもたらす個性を指します。
生茶は、その年の天候や生産者の技術がごまかしなくダイレクトに反映されるため、茶葉が育った環境そのものを味わいたいというニーズに応えてくれます。 - 忘れられない鮮烈な風味:生茶ならではの、青々しく鮮烈な香りと凝縮された旨味は、一度体験すると忘れられないほどのインパクト。
この独特な風味が、既存のお茶では満足できなくなったお茶好きたちの探求心を刺激するのです。
「生」の秘密は製造工程にあり!生茶ができるまで
生茶がなぜこれほどフレッシュで個性的なのか。その秘密は、一般的なお茶とは決定的に違う「ある工程」の不在に隠されています。
茶葉の個性が際立つ!生茶の製造工程
生茶の製造は、実は一般的な煎茶づくりの途中段階でゴールを迎えます。
- 摘採(茶摘み):お茶の木(チャノキ)から新芽を摘み取る作業のこと。
- 蒸熱(じょうねつ): 摘採した生葉を蒸気で蒸し、酸化酵素の働きを止める。お茶の品質を左右する最初の重要な工程。
- 冷却(れいきゃく): 蒸した茶葉をすばやく冷まし、余分な水分を取り除く。
- 葉打ち(はうち):蒸した後の熱く湿った茶葉を攪拌(かくはん)する工程
- 粗揉(そじゅう): 熱風を送りながら、茶葉を揉んで乾燥させる最初の揉み工程。
- 揉捻(じゅうねん):粗揉を経た茶葉に力を加え、水分をさらに均一化させる。
- 中揉(ちゅうじゅう):茶葉を再び熱風で乾燥させながら、よりをかけて細長く整える。
- 精揉(せいじゅう): 茶葉の形を針のようにまっすぐ美しく整え、乾燥を仕上げる。
- 乾燥(かんそう):茶葉の水分量が5%程度になるまでしっかりと乾燥させ、貯蔵性を高める。
- 荒茶(あらちゃ):お茶の一次加工品の完成!!← ここが生茶!



流れとしては、上の表のを見てもらうと 分かると思いますが、お茶ができるまでの途中までの工程ですが、意外に工程が多いのよね笑
荒茶(あらちゃ)の段階がゴール
実は、私たちが「生茶」と呼んで楽しんでいるものの多くは、この「荒茶」そのものなのです。
荒茶は、まだ茎や粉などが混じった、いわば原石の状態。
この荒茶から選別を行い、最終的に「火入れ」をして初めて、私たちがよく知る「煎茶」が完成します。
一般的なお茶(火入れ茶)の製造工程との比較
工程 | 生茶(荒茶) | 一般的なお茶(火入れ茶) | 目的・効果 |
摘採 | ● | ● | 茶葉を摘み取る |
蒸熱 | ● | ● | 酸化を止める |
揉む | ● | ● | 形を整え、成分を出しやすくする |
乾燥 | ● | ● | 水分を飛ばす(荒茶の完成) |
選別・整形 | △(行わないことも) | ● | 茎や粉を取り除き、形を揃える |
火入れ | 行わない | ●(必須) | 香ばしい香りを引き出し、保存性を高める |
合組(ブレンド) | △(単一が多い) | ● | 品質を均一にする |



この表からも、生茶がいかに「素材勝負」のお茶であるかがお分かりいただけるでしょう。
五感で愉しむ生茶の魅力
生茶の真価は、理屈ではなく五感で感じてこそ!
目、鼻、舌をフル活用して、その鮮烈な個性を体験してみましょう。
味わいと香りの特徴:鮮烈な「青い香り」と凝縮された旨味
生茶の最も特徴的な魅力は、その香りと味わいに集約されます。
生茶ならではの美しい水色(すいしょく)
【実践編】生茶のポテンシャルを最大限に引き出す淹れ方
希少な生茶を手に入れたなら、そのポテンシャルを120%引き出して味わいたいもの。
ここでは、誰でも簡単に真似できる淹れ方のコツをご紹介します。
基本の淹れ方:低温でじっくり旨味を引き出す



生茶の甘み・旨味成分(アミノ酸)は低温でじっくりと溶け出し、渋み成分(カテキン)は高温で出やすい性質があります。
この温度差を利用するのが、美味しく淹れる最大のポイントです。
沸騰したお湯を一度湯呑みに注ぎ、少し待つことで70℃前後の「ぬるめ」のお湯を用意します。
急須に少し多めの茶葉(1人あたりティースプーン2杯、約4gが目安)を入れます。
茶葉にゆっくりとお湯を注ぎ、1分~1分半ほど、急須を揺らさずに静かに待ちます。



茶葉がゆっくりと開いていくのを眺めるのも一興です。
各湯呑みに少しずつ、均等な濃さになるように往復しながら注ぎ分けます。
最後の一滴は「ゴールデンドロップ」と呼ばれ、旨味が凝縮されているので、必ず注ぎ切りましょう。
二煎目、三煎目の楽しみ方
生茶の魅力は一煎目だけではありません。煎を重ねるごとに違った表情を見せてくれます。
上級者向け:氷出しで楽しむ究極の甘みと旨味
「生茶の甘みと旨味を極限まで味わい尽くしたい!」という究極のお茶好きには、「氷出し」がおすすめです。
渋み成分がほとんど抽出されず、まるで玉露のような、とろりとした濃厚な甘みと旨味の雫を堪能できます。
急須、茶葉、氷
溶け出したお茶を、おちょこのような小さな器に注いで、じっくりと味わいます。



時間はかかりますが、その一滴は、待った時間に見合うだけの感動的な美味しさです。
朝の出校、出勤前に準備して、冷蔵庫に急須ごと保管しておくと帰宅後に楽しみが待ってます。
自分好みの生茶を見つけるには?選び方と購入のポイント
生茶の魅力に気づいてしまったあなた。次なるミッションは「自分史上最高の生茶」を見つけ出すことです。
プロの茶師気分で、自分好みの一品を探し当てましょう!



とりあえずマイルドで飲みやすい物を試したいって方は下の八女茶の荒茶が飲みやすいかと思う。



あと、ネタ的な感じにはなりますが、ペットボトルの生茶と比較しても面白いかもしれません。
実際こないだ飲んでみたら、昔のペットボトルの生茶に比べて、めちゃ進化しててびっくりしたので、ついでにリンク乗っけときます(笑)
知っておきたい生茶の注意点と保存方法
多くの魅力を持つ生茶ですが、その「生」であるがゆえのデリケートな側面も理解しておくことが、美味しく楽しむための秘訣です。
デリケートな生茶の弱点とは?
生茶は、品質を安定させるための火入れを行っていないため、非常に繊細です。
- 品質の劣化が早い:空気、光、湿度、温度の影響を受けやすく、せっかくのフレッシュな味わいや香りが数週間で変化してしまいます。長期保存には全く向いていません。
- 独特の青臭さ: このフレッシュな青い香りが生茶の魅力ですが、人によっては「青臭い」と感じることも。
火入れ茶の香ばしさが好きな方には、少し物足りなく感じられるかもしれません。
品質を保つための正しい保存方法
生茶を手に入れたら、その繊細な風味を1日でも長く保つために、正しい保存を心がけましょう。
- 鉄則は「密閉して冷蔵・冷凍」: 生茶は常温保存NGです。
購入後はすぐに、光を通さない密閉容器(茶筒など)に入れ、冷蔵庫または冷凍庫で保存してください。 - 匂い移りに注意:茶葉は匂いを吸着しやすい性質があります。
キムチやニンニクなど、香りの強いものの近くには置かないようにしましょう。 - 開封時の結露を防ぐ:冷凍庫から出した際は、結露で茶葉が湿気るのを防ぐため、必ず常温に完全に戻してから開封してください。



ここまで、うんちく並べてきましたが、生茶(荒茶)も仕上げ茶も、美味いもんは美味い!そして品質が良ければ良いほで痛みやすい傾向にあります。
適材適量で楽しむことがお茶を楽しむに繋がるかもしれません。
【番外編】プーアル茶の「生茶」との違い
お茶の世界には、もう一つ「生茶(なまちゃ、もしくは“ションチャ”)」と呼ばれるお茶が存在します。
それが中国茶の「プーアル茶」です。
しかし、これは日本の生茶とは全くの別物なので注意が必要です。
日本茶の「生茶」 | プーアル茶の「生茶」 | |
定義 | 火入れをしていない緑茶 | 麹菌による発酵(後発酵)をさせていないプーアル茶 |
製法 | 蒸して酸化を止める(不発酵茶) | 釜炒りで酸化を止め、日光で乾燥させる(後発酵茶) |
楽しみ方 | フレッシュな風味を短期で楽しむ | 年月をかけて熟成させ、味わいの変化を楽しむ(ヴィンテージ) |
簡単に言うと、日本茶の生茶は「加熱処理の有無」がポイントであり、プーアル茶の生茶は「微生物による発酵の有無」がポイントです。



同じ「生茶」という名前でも、全く異なるカテゴリーのお茶だと覚えておくとなんかオタクっぽいです。
AFTERWORD
お茶の「生茶」は、火入れをしないことで、茶葉本来の鮮烈な香りと凝縮された旨味をダイレクトに味わえる!
まさに「茶葉の刺身」とも呼べる特別な存在です。
そのデリケートさゆえに、限られた時期にしか楽しめない希少性も、お茶好きの心を強く惹きつけます。
まずは基本の淹れ方で、その鮮烈な個性に触れてみてください。
そして、低温でじっくり淹れて繊細な旨味を味わったり、氷出しで究極の甘みを追求したりと、自分だけの楽しみ方を見つけるのも一興です。
この記事を読んで「生茶、飲んでみたい!」と思っていただけたなら、これ以上嬉しいことはありません。
ぜひ、お近くの日本茶専門店や、茶農家さんのオンラインショップで「生茶」や「荒茶」を探してみてください。
きっと、あなたがまだ知らない、新しいお茶の世界の扉が開かれるはずです。



今回、この生茶の記事を分かりやすく書くためだけに、お茶の製造工程の記事を工程別に詳しく書くのに3週間!
お茶の工程を文字でまとめることが難しいすぎて発狂しそうになったりました笑!
だがしかし、それはここだけの話にして…
お茶が好きになるきっかけかお茶に興味が湧いた方の参考になれば嬉しいです。笑
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