アッサム紅茶とは?
世界最大級の産地が育む力強い味わい「アッサム紅茶」と聞いて、真っ先にミルクティーを思い浮かべたあなた、鋭いですね!
その濃厚なコクは、まさにミルクとの相性抜群。
しかし、アッサム紅茶の魅力はそれだけにとどまりません。
インド北東部に広がる、世界最大級の紅茶産地アッサム地方で生まれたこの紅茶は、力強い味わいと甘く芳醇な香りで、世界中の紅茶好きを魅了し続けています。
その物語は19世紀、イギリス人冒険家がこの地で野生のお茶の木を発見したことから始まります。当時、お茶の輸入を中国に頼りきりだったイギリスにとって、これはまさに「ジャングルで見つけた宝の木」。この発見が、アッサムを世界に冠たる紅茶の一大産地へと押し上げる運命の転換点と言われています。
アッサム地方は、世界有数の雨量を誇る高温多湿な気候と、雄大なブラマプトラ川がもたらす肥沃な土壌に恵まれています。
この独特のテロワール(風土)こそが、他にはない力強く、甘く、そして濃厚な味わいのアッサム紅茶を生み出す秘密です。
世界三大紅茶の一つとしての存在感
さて、紅茶好きなら一度は耳にする「世界三大紅茶」。
一般的にはインドの「ダージリン」、スリランカの「ウバ」、そして中国の「キームン」が挙げられます。
「あれ?我らがアッサムはどこへ?」と疑問に思った方もいるでしょう。
実はこの「世界三大紅茶」という称号は、主に日本で広まったキャッチコピーのようなもの。
だからといってアッサム紅茶が劣っているわけでは決してありません。
むしろ、その生産量はインド紅茶全体の約半分を占め、世界中の食卓に欠かせない存在です。
日本茶アドバイザーパトラッシュ♂ダージリンが「紅茶のシャンパン」と称される孤高の貴婦人なら、アッサム紅茶は「みんなの頼れる兄貴分」。
その安定した品質とどっしりとした味わいは、多くのブレンドティーのベースとしても大活躍しており、私たちの日常に深く溶け込んでいます。
アッサム種とは?紅茶に適した茶樹の発見
アッサム紅茶の歴史を語る上で欠かせないのが、1823年に発見された茶樹「アッサム種(学名:Camellia sinensis var. assamica)」です。
イギリス人のロバート・ブルースによって発見されたこの品種は、中国種とは異なる大きな葉を持ち、紅茶作りに不可欠なカテキンを豊富に含んでいます。



まさに、アッサム種は世界の紅茶のスタンダードを作り上げた立役者と言えますね。
アッサム紅茶の味と香りの特徴
アッサム紅茶の真骨頂は、なんといってもその濃厚で力強い味わいと甘く芳醇な香りにあります。
一口飲めば、黒糖やカラメルを思わせるしっかりとしたコクと、奥深い甘みが口いっぱいに広がります。
その水色(すいしょく)は、他の紅茶とは一線を画す、深く美しい赤褐色。見た目からもその濃厚さが伝わってきます。
「モルティーフレーバー」と呼ばれる豊かな香り
アッサム紅茶を特徴づけるキーワードが、この「モルティーフレーバー」です。
「モルティー」とは麦芽(モルト)を意味し、その名の通り、まるでローストした麦芽や黒糖のような、香ばしく甘い香りが立ち上ります。



このうっとりするような香りの虜になる人は後を絶たず、「この香りを嗅ぐだけで幸せ」という声も多いほど。
特にミルクとの相性は格別で、アッサム紅茶のモルティーフレーバーがミルクの自然な甘みを引き立て、驚くほどリッチでまろやかな味わいのミルクティーを生み出します。
収穫時期で変わる味わい
ファーストフラッシュとセカンドフラッシュ
一年を通して収穫されるアッサム紅茶ですが、摘み取られる時期によってその個性は大きく変化します。
代表的なのが「ファーストフラッシュ(春摘み)」と「セカンドフラッシュ(夏摘み)」です。
| 収穫時期 | 主な特徴 | おすすめの飲み方 |
| ファーストフラッシュ(春摘み) | 3月~4月頃に収穫。若々しく爽やかな香りと、軽快な渋みが特徴。アッサムらしい力強さは控えめ。 | ストレートティーで、そのフレッシュさを楽しむのがおすすめ。 |
| セカンドフラッシュ(夏摘み) | 5月~6月頃に収穫されるクオリティーシーズン。モルティーフレーバーが最も強く、濃厚なコクと甘みが頂点に達する。 | ミルクティーはもちろん、ストレートでもその力強い味わいを堪能できる。 |
一般的に「アッサムらしい味」を求めるなら、断然セカンドフラッシュがおすすめです。
濃厚なコクと甘い香りは、まさにアッサム紅茶の真骨頂と言えます。



日本茶だとファーストフラッシュ(1番茶)の方が美味しいとお言われてますが、紅茶だとセカンドフラッシュ(2番茶)の方がおススメなのは製法によるものがあるかもしれませんね。
美味しいアッサム紅茶の選び方
「アッサム紅茶に挑戦したいけど、種類が多すぎて選べない!」そんなあなたのために、美味しいアッサム紅茶を選ぶための2つの重要なポイント、「製法」と「等級」を分かりやすく解説します。
製法による違い
CTC製法とオーソドックス製法
アッサム紅茶の製造方法には、大きく分けて2種類あります。この製法の違いが、味わいやおすすめの飲み方を大きく左右するのです。
Crush(潰す)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)の頭文字を取った製法で、茶葉を細かく丸い粒状に加工します。
短時間で色、味、香りをしっかり抽出できるのが最大の特徴です。
伝統的な手作業に近い製法で、茶葉を丁寧に揉んで撚りをかけ、葉の形をある程度残したまま仕上げます。



どちらが良いというわけではなく、「どう楽しみたいか」で選ぶのが正解です。
濃厚なミルクティーが好きならCTC製法、アッサム紅茶本来の繊細な香りを楽しみたいならオーソドックス製法を選ぶと、満足のいく一杯に出会えるはずです。
茶葉の等級(グレード)を知ろう
紅茶のパッケージで見かける「BOP」や「OP」といったアルファベット。
これは茶葉の「等級(グレード)」を表しており、品質の優劣ではなく、主に茶葉の形状や大きさを示しています。
アッサム紅茶でよく見られる主な等級は以下の通りです。
| 等級(グレード) | 名称 | 特徴と用途 |
| OP | オレンジ・ペコー | 細長く撚られた大きな葉。ゆっくりと抽出され、香り高い。ストレートティー向き。 |
| BOP | ブロークン・オレンジ・ペコー | OPを細かく砕いたもの。最も一般的で、味と香りのバランスが良い。ストレートにもミルクにも。 |
| BOPF | ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス | BOPよりさらに細かい茶葉。短時間で濃く抽出できるため、ティーバッグによく使われる。ミルクティー向き。 |
| D | ダスト | 最も細かい粉状の茶葉。素早く濃厚な味が出る。業務用やティーバッグに使われることが多い。 |
一般的に、茶葉が細かいほど短時間で濃く抽出される傾向があります。
アッサム紅茶を最大限に楽しむ!美味しい淹れ方
せっかく手に入れたアッサム紅茶。どうせなら一番美味しい淹れ方で、その魅力を最大限に引き出してあげましょう。
基本のホットティーから絶品ミルクティーまで、誰でもできるコツをご紹介します。
基本のホットティー(ゴールデンルール)
まずは基本のストレートティーから。
紅茶を美味しく淹れるための世界共通の基本は「ゴールデンルール」と呼ばれています。
以下のポイントを押さえるだけで、いつもの紅茶が驚くほど美味しくなりますよ。
- 良い茶葉を使う:新鮮で質の良いアッサム紅茶を選びましょう。
- 汲みたての水を沸かす:水道から汲みたての、空気をたくさん含んだ水を使い、沸騰直後(95〜98℃)の熱湯を用意します。
- ポットとカップを温める:事前に熱湯を注いで、ティーポットとカップを温めておきましょう。お湯の温度が下がるのを防ぐ重要な一手間です。
- 茶葉の量を正確に計る:ティースプーン山盛り1杯(約3g)でカップ1杯分(約150ml)が目安です。
- 蒸らし時間を守る:ポットに蓋をして、茶葉をしっかり蒸らします。細かいBOPなら3分、大きなOPなら4〜5分が目安です。
このゴールデンルールを守ると、ポットの中で茶葉が上下に動く「ジャンピング」が起こり、アッサム紅茶の美味しさを余すところなく引き出すことができます。
濃厚さが際立つ!絶品ミルクティーの作り方
アッサム紅茶といえば、やはりミルクティー。
そのポテンシャルを120%引き出す、鍋を使った本格的な煮出し式ミルクティー(チャイ)の作り方をご紹介します。
- アッサムCTC茶葉: ティースプーン山盛り2杯(約6g)
- 水: 100ml
- 牛乳: 150ml
- お好みで砂糖やハチミツ
茶こしでカップに注ぎ、お好みで甘みを加えたら完成です。
チャイやロイヤルミルクティーへのアレンジ
アッサム紅茶の懐の深さは、アレンジの幅広さにも表れます。
マサラチャイに挑戦:上記のミルクティーの作り方で、牛乳を加えるタイミングで、お好みのスパイスを一緒に入れて煮出しましょう。
シナモンスティック、潰したカルダモン、クローブ、生姜スライスなどがおすすめです。
スパイスの刺激的な香りとアッサムの甘みが融合し、心も体も温まる一杯になります。
リッチなロイヤルミルクティーに:ロイヤルミルクティーは、一般的に水と牛乳の割合を1:1で作り、茶葉を多めにして煮出すのが特徴です。
より濃厚でクリーミーな味わいを楽しみたい方は、牛乳の割合を増やしてみてください。
おすすめのアッサム紅茶ブランド
ここでは、紅茶好きから支持される人気のアッサム紅茶ブランドをいくつかご紹介します。
それぞれに個性があるので、お気に入りの一杯を見つける旅の参考にしてください。
| ブランド名 | 特徴 | こんな人におすすめ |
| リプトン (Lipton) | 「サー・トーマス・リプトン」シリーズのアッサムは、しっかりとしたコクと香り。比較的手に入りやすく、毎日のミルクティーに最適。 | コスパ良く、安定した美味しさを求める方。 |
| トワイニング (TWININGS) | 英国王室御用達の老舗。「ゴールデンアッサム」は黄金色の芯芽(ゴールデンチップ)を豊富に含み、芳醇な香りとまろやかな味わいが楽しめる。 | 少し贅沢な気分で、上品なアッサムを味わいたい方。 |
| ルピシア (LUPICIA) | 世界のお茶を扱う日本の専門店。「アッサム・カルカッタオークション」など、特定の茶園やロットにこだわった高品質な茶葉が揃う。 | 様々な産地やグレードのアッサムを飲み比べてみたい方。 |
| アーマッドティー (AHMAD TEA) | 手頃な価格ながら、しっかりとした味わいが人気の英国ブランド。ミルクティーにぴったりの力強いブレンドが特徴。 | 毎日の食卓で、気軽に本格的な英国紅茶を楽しみたい方。 |
| 神戸紅茶 | 1925年創業の日本の老舗紅茶メーカー。「モルティーアッサム」など、日本人の味覚に合わせた独自のブレンドが魅力。 | 日本ブランドならではの、繊細でバランスの取れた味わいを好む方。 |
この他にも、多くのブランドが個性豊かなアッサム紅茶を展開しています。
ぜひ色々と試して、あなたの「推しアッサム」を見つけてみてください。
AFTERWORD
奥深いアッサム紅茶の世界で、お気に入りの一杯を
力強い味わいと甘い香り、そしてミルクとの最高の相性を持つアッサム紅茶。
その世界は、産地や収穫時期、製法の違いによって、驚くほど多様な表情を見せてくれます。
ストレートでその繊細な香りを堪能するもよし、たっぷりのミルクで濃厚なコクに癒されるもよし、スパイスを加えてエキゾチックなチャイに挑戦するもよし。アッサム紅茶の楽しみ方は無限大です。
この記事を片手に、ぜひあなただけのお気に入りのアッサム紅茶を見つけて、素敵なティータイムを過ごしてみてはいかがでしょうか。きっと、その深く、温かい魅力の虜になるはずです。
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