荒茶とは?
その定義と仕上げ茶との決定的違い
お茶好きを自負する皆さん、こんにちは!
「いつものお茶、なんだか物足りない…」なんて、密かに感じていませんか?もしあなたの探求心がうずいているなら、日本茶の新たな扉「荒茶(あらちゃ)」の世界へようこそ。
日本茶アドバイザーパトラッシュ♂今回は、そのワイルドで奥深い魅力に迫ります。まずは、荒茶が一体何者なのか、その正体を暴いていきましょう。
荒茶:畑で生まれたままの姿
荒茶とは、茶畑で摘み取られた生葉を、酸化を防ぐために蒸して揉み、乾燥させただけの一次加工品のことです。
いわば、製茶工場で生まれたままの「すっぴん状態」のお茶。



そのため、見た目は茶葉の形が大小さまざまで、お茶の茎や細かい粉も混じったままの、非常にワイルドな姿をしています。
この荒茶、実は一般の消費者がスーパーなどで目にすることはほとんどありません。
通常はここから「仕上げ」という工程を経て、私たちがよく知る「煎茶」などの商品になります。
つまり、荒茶は美味しい日本茶が生まれるための「原石」であり、原料ってことです。
仕上げ茶:洗練された商品としての姿
一方、私たちが普段お店で購入しているお茶は「仕上げ茶」と呼ばれます。
これは、原料である荒茶をさらに加工し、商品として完成させたものです。
具体的には、以下のようなプロの技を経て、洗練された姿へと生まれ変わります。
- 選別:ふるいにかけ、葉の大きさや形を均一に揃えたり、茎(棒)や粉などの「出物(でもの)」を取り除いたりします。
- 火入れ:再度熱を加えて乾燥させる工程。これにより、お茶特有の香ばしい風味(火香)を引き出し、保存性を高めます。
- 合組(ごうぐみ): 産地や品種の異なる複数の荒茶をブレンドし、そのお店独自の味や香りを創り出し、品質を一定に保ちます。
このように、仕上げ茶は茶師の繊細な技術によって磨き上げられ、安定した品質と美味しさを持つ「製品」として私たちの元に届くのです。
| 比較項目 | 荒茶 | 仕上げ茶 |
| 状態 | 一次加工品、原料(原石) | 完成品、製品(宝石) |
| 見た目 | 不揃い、茎や粉が混じる | 均一で整っている |
| 加工 | 蒸熱、揉み、乾燥のみ | 選別、火入れ、合組など |
| 味わい | 産地の個性がダイレクト、複雑で野性的 | 安定し、洗練されている |
| 流通 | 主に生産者から茶問屋へ | 一般的に市販されている |
なぜ今「荒茶」が注目されるのか?
通を唸らせる3つの魅力
「加工前の未完成品なんでしょ?なんでそんなものが人気なの?」と思ったそこのあなた。
その「未完成」こそが、お茶オタクの心を鷲掴みにする魅力の源泉なのです。
ブレンドされる前の、ありのままの日本茶の姿、荒茶が持つ、ワイルドで抗いがたい3つの魅力をご紹介しましょう。
- 産地の個性が光る、ダイレクトな味わい
- 新鮮さと生命力溢れる香り
- 「出物」がもたらす複雑で奥深い風味
魅力①:産地の個性が光る、ダイレクトな味わい
仕上げ工程の「合組(ブレンド)」は品質を安定させる一方、お茶の鋭い個性を平均化させてしまう側面も。
しかし、ブレンドされていない単一農園・単一品種の荒茶は、その土地の気候や土壌、生産者のこだわりがダイレクトに反映された、唯一無二の味わいを持っています。



まさに、その年の、その畑でしか味わえない「一期一会」の味。
静岡の牧之原台地で育った力強い渋みや、鹿児島の温暖な気候が育んだ豊かな旨みなど、産地ごとのテロワール(生育環境)をストレートに感じられるのが、荒茶最大の魅力です。
魅力②:新鮮さと生命力溢れる香り
荒茶は、仕上げの「火入れ」を最小限に抑えているものが多く、茶葉本来のフレッシュな香りが生きています。
急須にお湯を注いだ瞬間に立ち上る、若葉のような瑞々しい香りや、生命力に満ちた力強い青い香りは、荒茶ならでは。



まるで茶畑のど真ん中で深呼吸しているかのような、鮮烈なアロマ体験があなたを待っています。
魅力③:「出物」がもたらす複雑で奥深い風味
仕上げの過程で選別され、取り除かれる茎や粉、芽の部分。これらは「出物(でもの)」と呼ばれます。
通常の煎茶にはあまり含まれないこれらの部位が、荒茶にはそのまま入っています。
これらの「出物」が渾然一体となることで、葉の部分だけでは決して出せない、複雑で奥行きのある味わいが生まれるのです。



慣れない最初のうちは、ただ渋いか苦みがあると感じるかもしれませんが、お茶を飲んでいるうちに、雑味と紙一重のこの複雑さこそ、お茶オタクを虜にする「沼」の入り口にどっぷり浸かっているかもしれません。
荒茶ができるまで|知られざる製造工程
畑で摘まれた一枚の葉が、ワイルドな魅力あふれる「荒茶」になるまでには、どのようなドラマが繰り広げられているのでしょうか。
その知られざる製造工程は、一言でいえば「揉む」と「乾かす」の繰り返し。
日本茶の品質を決定づける重要なプロセスを、こっそり覗いてみましょう。
- 摘採(茶摘み):お茶の木(チャノキ)から新芽を摘み取る作業のこと。
- 蒸熱(じょうねつ): 摘採した生葉を蒸気で蒸し、酸化酵素の働きを止める。お茶の品質を左右する最初の重要な工程。
- 冷却(れいきゃく):蒸した茶葉をすばやく冷まし、余分な水分を取り除く。
- 葉打ち(はうち):蒸した後の熱く湿った茶葉を攪拌(かくはん)する工程
- 粗揉(そじゅう): 熱風を送りながら、茶葉を揉んで乾燥させる最初の揉み工程。
- 揉捻(じゅうねん): 粗揉を経た茶葉に力を加え、水分をさらに均一化させる。
- 中揉(ちゅうじゅう): 茶葉を再び熱風で乾燥させながら、よりをかけて細長く整える。
- 精揉(せいじゅう): 茶葉の形を針のようにまっすぐ美しく整え、乾燥を仕上げる。
- 乾燥(かんそう):茶葉の水分量が5%程度になるまでしっかりと乾燥させ、貯蔵性を高める。
- 荒茶(あらちゃ):← ココです!お茶の一次加工品の完成!!



この後、茶葉は品質を保つために冷凍・冷蔵庫で保管され、仕上げ加工の出番を待ちます。
荒茶のポテンシャルを最大限に!美味しい淹れ方と楽しみ方
個性爆発の荒茶を手に入れたら、次はそのポテンシャルを120%引き出す淹れ方に挑戦です。
ちょっとしたコツで、荒茶は劇的に美味しくなります。さあ、最高のティータイムの準備をしましょう!
基本の淹れ方:じっくり旨みを引き出す
荒茶は、茎や粉など様々な部位が混ざっているため、成分が溶け出す速度もバラバラ。
じっくり時間をかけて、それぞれの旨みを引き出してあげるのが美味しく淹れる最大のポイントです。
2人分で約8g、3人分なら約10gが目安です。
ティースプーン山盛り2〜3杯と覚えておきましょう。
粉が多いので、深蒸し茶用の目の細かい急須を使うのがおすすめです。
ここが最重要!
沸騰したお湯を少し冷ました、70℃〜80℃の湯を使いましょう。
熱すぎるお湯は渋みや苦みを強く引き出してしまうため、少しぬるめにすることで、荒茶特有のまろやかな甘みとコクが際立ちます。
湯呑みにお湯を一度注いでから急須に移す「湯冷まし」をすると、ちょうど良い温度になりますよ。
浸出時間は40秒前後がおすすめです。
粉の部分が多い荒茶は、長く置きすぎると渋みが出やすいので注意が必要。
蓋をして、急須の中で茶葉が静かに開くのを待ちましょう。
複数の湯呑みに注ぐ際は、少しずつ均等に注ぎ分ける「廻し注ぎ」で、濃さを均一に。
そして、最後の一滴には旨みが凝縮されています。



急須を優しく振って、愛情を込めて絞り切りましょう!この「ゴールデンドロップ」が、あなたを幸せにしてくれるはずです。
二煎目、三煎目の楽しみ方
荒茶は煎(せん)が効く(何煎も楽しめる)のも魅力の一つ。
一杯で終わらせるのはもったいない!
二煎目:一煎目で茶葉がしっかり開いているので、お湯を注いだら時間を置かず、10秒ほどですぐに注ぎ分けましょう。一煎目とは違う、すっきりとした味わいが楽しめます。
三煎目:旨み成分が少なくなってきたら、今度は90℃以上の熱いお湯で淹れてみてください。香ばしさが引き立ち、カテキンのキリッとした渋みが心地よい、また違った表情を見せてくれます。
【上級者向け】水出しで楽しむ凝縮された旨み
暑い季節や、じっくりお茶と向き合いたい時には、水出しが最高です。
カフェインやカテキン(渋み成分)は低温では溶け出しにくく、旨み成分であるテアニンが主役の、驚くほどまろやかで甘いお茶になります。
- お茶パックなどに荒茶(1リットルに対し10〜15g)を入れる。
- 冷水ポットに茶葉と水を入れ、冷蔵庫で3〜6時間置くだけ。
- 寝る前に仕込んでおけば、翌朝には極上の水出し荒茶が完成しています。



この凝縮された旨み、一度味わうとやみつきになること間違いなしです!
自分好みの荒茶を見つけるには?選び方と購入のポイント
荒茶の魅力に気づいてしまったあなた。次なるミッションは「自分史上最高の荒茶」を見つけ出すことです。
しかし、そのワイルドさゆえに、選び方には少しコツがいります。プロの茶師気分で、自分好みの一品を探し当てましょう!



とりあえずマイルドで飲みやすい物を試したいって方は下の八女茶の荒茶が飲みやすいかと思う。



ちょっとパンチが聞いてる渋いやつがいい人は下の静岡がおすすめ
選び方のポイント
- 産地で選ぶ:荒茶は産地の個性が命。まずは有名産地から試してみるのが王道です。
- 品種で選ぶ:実は、お茶にもお米のコシヒカリのように、たくさんの品種があります。代表的な品種を知っておくと、選ぶ楽しみが倍増します。
産地で選ぶ: 荒茶は産地の個性が命。まずは有名産地から試してみるのが王道です。
品種で選ぶ: 実は、お茶にもお米のコシヒカリのように、たくさんの品種があります。代表的な品種を知っておくと、選ぶ楽しみが倍増します。
- 信頼できる専門店や農家から:荒茶は品質がダイレクトに出るため、生産者の顔が見えるお店や、お茶に詳しいスタッフがいる専門店での購入がおすすめです。「荒茶ありますか?」と聞いてみましょう。
- 少量から試す:荒茶は製品として味が均一化されていないため、同じ産地でも生産者や畑によって味が大きく異なります。まずは気になるものを少量ずつ購入し、自分の好みを探っていくのが賢い方法です。
- 「茶柱が立つかも」という遊び心:茎が混じっている荒茶は、茶柱が立つ確率が高いかもしれません。そんな遊び心を持って選ぶのも、荒茶ならではの楽しみ方です。



ぶっちゃけ荒茶を販売している専門店も少ないので、良ければさっき紹介した商品を参考に調べてほしければ試してみておくれ。
AFTERWORD
荒茶で広がる、新たなお茶の世界
畑で生まれたままの姿である「荒茶」。
それは、仕上げ茶のように洗練されてはいないものの、産地の個性、新鮮な香り、そして「出物」がもたらす複雑な味わいに満ちた、日本茶の原石ともいえる魅力的なお茶です。
その製造工程を知り、淹れ方を少し工夫するだけで、荒茶は秘めたるポテンシャルを最大限に発揮してくれます。
産地や品種、そして信頼できる作り手を見つける旅は、まさにお茶好きにとっての新たな冒険そのもの。
いつものお茶に少しマンネリを感じたら、ぜひ荒茶の世界の扉を叩いてみてください。
そこには、あなたの知らない、ワイルドで奥深い日本茶の新たな魅力が広がっているはずです。
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