銘々皿(めいめいざら)とは?茶道における役割と基礎知識
茶道のお稽古に行くと、突然目の前に現れる美しいお皿。
「これ、どうやって扱うの?」「まさかお土産に持って帰っていいやつ?」なんてドキドキした経験はありませんか?
ここでは、茶席の名脇役である「銘々皿」について、その正体と役割をサクッと解説します。
銘々皿の意味と読み方
まず読み方ですが、「めいめいざら」と読みます。
「命名皿」ではありませんので、新しい名前をつける必要はありません。
「銘々(めいめい)」とは、「それぞれ」「ひとりひとり」という意味。つまり、「一人分ずつ取り分けられたお菓子を乗せるお皿」のことです。
大皿料理に対する取り皿のようなポジションですが、茶道の世界ではただの取り皿ではなく、亭主(ホスト)のセンスや季節感を表現する重要なキャンバスでもあります。
茶席でのお菓子の出し方(縁高と銘々皿の違い)
茶道には、お菓子の出し方が大きく分けて2パターンあります。
「縁高(ふちだか)」と「銘々皿」です。この違いを知っておくと、茶室でドヤ顔ができます。
| 特徴 | 縁高(ふちだか) | 銘々皿(めいめいざら) |
| 見た目 | 重箱のような漆器の箱 | 平たい小皿(漆器、陶器など) |
| お菓子 | 主に「主菓子(おもがし)」 | 主に「干菓子」や略式の「主菓子」 |
| 茶の種類 | 濃茶(こいちゃ)の席で多い | 薄茶(うすちゃ)の席で多い |
| 雰囲気 | 格が高く、厳格 | 少しカジュアルで親しみやすい |
| 取り方 | 自分で箸を使って懐紙に移す | 最初から一人分が乗っていることが多い |
初心者のうちは、この「銘々皿」が登場する薄茶席に参加することが圧倒的に多いはずです。
銘々皿が使われるシーン(薄茶席や略式のおもてなし)
銘々皿は、主に「薄茶(うすちゃ)」の席で活躍します。
「今日はちょっと良いお菓子があるから、お抹茶でもいかが?」なんて時に、コンビニの紙皿ではなく銘々皿でお出しすれば、それだけで空間が「和のサロン」に早変わり。
茶道の堅苦しいルールを抜きにしても、持っておくと非常に便利なアイテムです。
【初心者必見】茶席での銘々皿の扱い方とマナー
さて、ここからが本番です。
銘々皿に乗ったお菓子が自分の前に運ばれてきました。
日本茶アドバイザーパトラッシュ♂茶道は「焦らしの美学」でもあります(嘘です、思いやりの美学です)。
お菓子が出された時の正しい受け取り方
お菓子が運ばれてきたら、以下の手順で受け取ります。
ロボットのようにカクカクする必要はありませんが、流れを覚えておきましょう。
お菓子を運んでくれた人(半東やお運びさん)に「ありがとうございます」の意を込めて一礼(行のお辞儀)。
自分の次の人に「お先に(おさきに)」と声をかけ、一礼(真のお辞儀)。



※これは「美味しいお菓子を先に食べちゃってごめんね!」という仁義です。
「頂戴いたします(ちょうだいいたします)」と挨拶し、一礼(真のお辞儀)。
銘々皿の置き場所(お茶の左側・畳の縁との関係)
挨拶が済んだら、いよいよお菓子を自分のテリトリーに引き寄せます。
基本位置
自分の膝前、畳の縁(へり)の内側(自分側)に置きます。
お茶との関係
お茶が出された後は、お茶碗の「左側(下座)」に置くのが一般的です。
そのまま食べてはダメ?懐紙への取り分け方
ここが最大の勘違いポイントです。
「銘々皿は、そのまま口に運ぶための皿ではありません」
銘々皿はあくまで「運搬用トレー」に近い役割です。
以下の手順で食べましょう。
食べ終わった後の拝見と下げ方
お菓子を美味しくいただいた後、銘々皿が美しい工芸品である場合は「拝見(鑑賞)」をします。
拝見の方法
両手で低く持ち、形や塗り、絵柄を鑑賞します。
「いい仕事してますねぇ」と心の中でつぶやきましょう。
下げ方
懐紙で軽くお皿の汚れ(粉など)を拭き清め、重ねて返却します(※流派や状況によります)。
銘々皿に使われる主な素材と特徴
銘々皿には「これを使いなさい」という絶対の決まりはなく、季節やシーンに合わせて素材を選びます。
まるでファッションのコーディネートのようです。
正式な場で重宝される「漆器(塗り物)」
- 特徴:軽くて丈夫、そして優美。黒塗りや朱塗り、蒔絵(まきえ)が施されたものなどがあります。
- シーン:お正月や炉(冬〜春)の季節、フォーマルな席でよく使われます。
- 注意点:傷がつきやすいので、金属のフォークなどは厳禁です。
季節感や温かみを感じる「陶磁器」
- 特徴:土の温かみがある「陶器」や、ツルッとした「磁器」。色や形が豊富です。
- シーン:季節の花が描かれたものや、変形皿(扇形や紅葉型など)は、その時期の茶会を盛り上げます。
- 魅力:漆器よりも少しカジュアルで、現代的なテーブルコーディネートにも合わせやすいです。
夏の茶会で涼を演出する「ガラス製」
- 特徴:透明感があり、見た目が涼やか。
- シーン:夏(風炉)の時期、特に盛夏の茶会で「涼」を届けるために使われます。
- ポイント:水まんじゅうや葛切りなど、瑞々しいお菓子との相性が抜群です。
木目が美しい「木製」とその向き(木目のマナー)
- 特徴:木の素材そのものを活かした「木地(きじ)」のもの。
- マナー(木目の向き): これが意外と重要です。
- 横向き(横目): 基本的に、木目が「横(自分の膝と平行)」になるように置きます。
- 縦向き(縦目): 神事など特殊な場合に使われることが多いため、通常の茶席では避けられます。



「木目は横!」と覚えておけば、お皿を置く向きで迷子にならずに済みます。
茶道初心者が最初に選ぶべき銘々皿のポイント
「自分でも銘々皿を買って練習したい!」という素晴らしい意欲を持ったあなたへ。
最初に買うべき一枚の選び方を伝授します。
練習用と自宅用を兼ねられる素材の選び方
最初は「樹脂製(プラスチック製)」や「ウレタン塗装の木製」がおすすめです。
- 理由:本漆(ほんうるし)は高価で、管理が大変(乾燥や湿気に弱い)。
- メリット:樹脂製なら洗剤で洗えますし、落としても割れにくい。最近は「これ本当にプラスチック?」と思うほど精巧なものもあります。
使いやすいサイズ(5寸・4.5寸)と形状
サイズは「寸(すん)」で表されます(1寸=約3.03cm)。
- 5寸(約15cm): 最も標準的。主菓子を乗せても余裕があり、見栄えが良いです。迷ったらコレ。
- 4.5寸(約13.5cm): 少し小ぶり。干菓子には良いですが、大きめの主菓子だと窮屈かも。
形状は、最初は「丸」か「四角(角が丸いもの)」が無難です。奇抜な形は使い所が限定されます。
季節を問わず使えるデザイン(無地や定番の柄)
桜の柄は春しか使えませんし、紅葉の柄は秋限定です。
最初の一枚は、「溜塗(ためぬり:小豆色のような深い色)」の無地や、「通年使える吉祥文様(松竹梅や七宝など)」を選ぶと、一年中使えてコスパ最強です。
100均や安価な代用品は練習に使える?
結論:練習なら全然アリです。
100円ショップの和食器コーナーにある小皿でも、「お辞儀をして、お皿を取り、懐紙に移す」という一連の動作の練習は十分可能です。
大切な銘々皿を長く使うためのお手入れ方法
お気に入りの銘々皿を手に入れたら、長く付き合っていくためのケアが必要です。
漆器と陶磁器で異なる洗い方の注意点
漆器(塗り物)
- NG: 食洗機、乾燥機、つけ置き洗い、硬いスポンジ、クレンザー。これらは漆器への「拷問」です。
- OK: ぬるま湯で、柔らかいスポンジや布を使って優しく洗う。洗った後はすぐに柔らかい布で水気を拭き取る(水道水のカルキ跡を残さないため)。
陶磁器
一般的な食器と同様に洗えますが、金彩や銀彩があるものは電子レンジや食洗機を避けましょう。
保管時に気をつけたい湿気と乾燥対策
特に漆器は「生き物」です。
- 極度の乾燥:ひび割れの原因になります。長期間使わない場合は、箱の中にコップ一杯の水を入れる(直接触れないように)などの工夫が必要なことも。
- 直射日光:紫外線は漆の大敵。変色の原因になるので、日の当たらない場所に保管しましょう。
傷をつけないための黒文字(菓子切り)の扱い



お菓子を切る時、黒文字(楊枝)の先でお皿の底をガリッ!とやってしまうと、持ち主(亭主)の心にも傷がつきます。
前述の通り、基本は「懐紙に移してから切る」のでお皿の上で切ることは少ないですが、もしお皿の上で切る必要がある場合は、力を入れすぎないようソフトタッチを心がけましょう。
AFTERWORD
銘々皿を知って茶席のおもてなしを楽しもう
銘々皿は、単なる「お菓子置き場」ではありません。
そこには、亭主からの「季節を感じてほしい」「ゆっくり楽しんでほしい」というメッセージが込められています。
- 読み方は「めいめいざら」。
- お菓子は「懐紙」に移してから食べる(直食い禁止!)。
- 木目は「横向き」が基本。
- 最初の一枚は「5寸の無地・樹脂製」が扱いやすくておすすめ。
マナーも大切ですが、一番大切なのは「お菓子を美味しくいただき、その場を楽しむこと」です。
銘々皿の扱いがスマートになれば、茶席での緊張が減り、お菓子の味がもっと格別になるはずですよ。





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