そもそも「発酵茶」ってどんなお茶?
「発酵茶」と聞くと、なんだか専門的で難しそう?いえいえ、ご安心を!
実は、あなたが普段何気なく飲んでいる紅茶や烏龍茶も、この「発酵茶」の立派な仲間なんです。
「発酵」と聞けば、多くの人が味噌や納豆、ヨーグルトといった、微生物が活躍する食品を思い浮かべるかもしれません。
しかし、お茶の世界で使われる「発酵」は、少しだけ意味合いが異なります。
お茶の「発酵」は味噌や納豆と違う?
お茶における「発酵」の主役は、微生物ではなく「酸化酵素」です。

切ったリンゴをそのままにしておくと、切り口が茶色く変色しますよね。あれと同じ現象が、お茶の葉でも起こっているとイメージしてください。摘み取られた茶葉が空気中の酸素に触れることで酸化し、色や香り、味わいが変化していくこと。
この化学変化を、お茶の世界では伝統的に「発酵」と呼んでいるのです。
この酸化の進み具合、つまり「発酵度」を職人が巧みにコントロールすることで、爽やかな緑茶から芳醇な紅茶まで、驚くほど多様な個性を持つお茶が生まれます。
発酵度で変わる!
お茶の分類と代表的な種類
お茶は、この「発酵度」を基準に、大きく4つのグループに分類できます。
発酵を全くさせない「不発酵茶」から、じっくりと最後まで発酵させる「発酵茶」まで、そのキャラクターは様々です。
お茶の分類 | 発酵度(目安) | 代表的なお茶 | 特徴 |
不発酵茶 | 0% | 緑茶(煎茶、玉露、抹茶など) | 摘んですぐに加熱し発酵を止める。フレッシュな香りと爽やかな渋みが魅力。 |
半発酵茶 | 10〜80%程度 | 烏龍茶(鉄観音、東方美人など) | 発酵を途中で止める。花のような華やかな香りとスッキリした後味。 |
発酵茶 | 85%以上 | 紅茶(ダージリン、アッサムなど) | 最後までしっかり発酵させる。豊かな香りと深いコク、美しい赤い水色(すいしょく)。 |
後発酵茶 | – | プーアル茶、碁石茶など | 微生物の力で発酵させる。熟成による独特の風味とまろやかな口当たり。 |
不発酵茶(発酵度0%)



「発酵?いえ、結構です!」とでも言うように、発酵を全くさせないのがこのグループ。
代表選手は、私たち日本人にお馴染みの緑茶です。
摘みたての新鮮な茶葉をすぐに蒸したり炒ったりして加熱処理することで、酸化酵素の働きを完全にストップさせます。
これにより、茶葉本来のフレッシュな緑色と、清々しい香りが保たれるのです。
半発酵茶(発酵度10〜80%程度)
緑茶(不発酵茶)と紅茶(発酵茶)の、まさに「いいとこ取り」をしたような存在が半発酵茶です。
その代表格が、豊かな香りで人気の烏龍茶。
茶葉を発酵させている途中で加熱し、絶妙なタイミングで発酵を止めることで作られます。発酵度が低ければ緑茶に近く、高ければ紅茶に近い味わいになり、そのバリエーションの豊かさは発酵茶の中でも随一です。
発酵茶(完全発酵茶)(発酵度85%以上)
茶葉の持つポテンシャルを信じ、最後までじっくりと完全に発酵させたお茶の王道。
世界で最も飲まれている紅茶がこのグループに属します。
しっかりと酸化させることで、紅茶特有の美しい赤褐色の水色(すいしょく)と、花や果物を思わせる華やかで奥深い香りが生まれるのです。
後発酵茶(微生物による発酵)
他のグループとは一線を画す、個性派がこの後発酵茶です。
一度、緑茶などと同じ製法で作ったお茶を、今度は麹菌といった微生物の力を借りて、長い時間をかけて発酵(熟成)させます。
代表格はプーアル茶で、熟成によって生まれる独特の風味と、驚くほどまろやかな口当たりが特徴。
発酵茶の嬉しい効果とは?
味わい深いだけでなく、私たちの心と体に嬉しい効果をもたらしてくれるのも発酵茶の大きな魅力。
ここでは、代表的な3つの効果をご紹介します。
- リラックス効果
- ダイエットのサポート
- 健康維持をサポート
リラックス効果
紅茶や緑茶に含まれるアミノ酸の一種「テアニン」には、リラックス効果があることで知られています。
テアニンは、脳内でリラックス状態の時に現れるα波を増加させ、心身を穏やかにしてくれる働きが期待できます。



仕事や勉強の合間に一杯の発酵茶でホッと一息つくのは、科学的にも理にかなっているのですね。
ダイエットのサポート
「美味しい食事は楽しみたい、でもスタイルも気になる…」そんな願いに寄り添ってくれるのが、烏龍茶やプーアル茶です。
- 烏龍茶: 特有の「ウーロン茶重合ポリフェノール」が、食事に含まれる脂肪の吸収を抑え、体外への排出をサポートする働きがあることが報告されています。
- プーアル茶: こちらも脂肪の吸収を抑える働きや、脂肪燃焼を助ける効果が期待されています。



もちろん、お茶を飲むだけで痩せるわけではありませんが、脂っこい食事のお供にすれば、これほど心強い味方はいないでしょう。
健やかな毎日を応援する健康成分
発酵茶には、私たちの健康維持をサポートする成分が含まれています。
日々のティータイムに発酵茶を取り入れることで、美味しく健やかな毎日を目指せます。
初心者でも簡単!発酵茶の美味しい淹れ方



「茶葉から淹れるのはハードルが高い…」なんてことはありません。いくつかのポイントを押さえるだけで、誰でも簡単にお店の味を再現できます。
基本の淹れ方(温かいお茶)
まずは急須(ティーポット)と湯呑みに熱湯を注ぎ、全体をしっかり温めてからお湯を捨てます。



この一手間で、お茶の香りが格段に引き立ちます。
温めた急須に、適量の茶葉を入れます。目安は1人分ティースプーン1杯(約3〜4g)です。
沸騰したお湯を少し落ち着かせた、それぞれの茶葉に合った温度のお湯を注ぎます。
(紅茶:95℃前後、烏龍茶:90〜95℃)
蓋をして、茶葉がゆっくり開くのを待ちます。(紅茶:2〜3分、烏龍茶:1分程度)
濃さが均一になるよう、複数の湯呑みに少しずつ注ぎ分けます。
最後の一滴は「ゴールデンドロップ」と呼ばれ、旨味が凝縮しているので、必ず注ぎ切りましょう。
夏にぴったり!水出しの楽しみ方
お湯を沸かす手間さえ不要な水出し(コールドブリュー)は、暑い季節にゴクゴク飲みたいときに最適です。
フタ付きの清潔なガラス製などのポットを用意します。
容器に茶葉と水を入れます。目安は水1リットルに対し、茶葉10〜15gです。
フタをして冷蔵庫に入れ、一晩(約8〜10時間)置くだけ。
どのお茶から始める?
初心者におすすめの発酵茶
「たくさんの種類があって、どれから試せばいいか分からない!」という発酵茶ビギナーのために、まずはこれを飲んでみてほしい、おすすめのお茶を厳選しました。
- 半発酵茶なら「凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)」
台湾を代表する有名な烏龍茶。
蘭の花を思わせる甘く爽やかな香りと、まろやかな味わいが特徴で、クセが少なく誰にでも愛される美味しさです。 - 発酵茶なら「ディンブラ」
スリランカ産の紅茶で、バラのような香りと心地よい渋み、そして爽快な後味のバランスが絶妙です。
ストレートはもちろん、ミルクティーにしても美味しくいただけます。 - 後発酵茶なら「熟成の浅いプーアル熟茶」
近年では、独特の土臭さがなく、チョコレートのような甘い香りのする飲みやすいプーアル茶が増えています。
まずは手軽なティーバッグから試してみるのも良いでしょう。
AFTERWORD
発酵茶の世界を探検してみよう
たった一つの「発酵」というプロセスが、これほどまでに多様で奥深いお茶の世界を生み出していることに、きっと驚かれたのではないでしょうか。
緑茶の清々しさ、烏龍茶の華やかさ、紅茶の芳醇さ、そしてプーアル茶の円熟味。
その日の気分や食事、時間帯に合わせてお茶を選ぶ楽しみは、あなたの日常をより豊かに彩ってくれるはずです。
まずは気になる発酵茶を一つ手に取って、その香りと味わいをじっくりと楽しんでみてください。
きっと、あなただけのお気に入りの一杯が見つかるはず。さあ、今日からあなたも、美味しくて楽しい発酵茶の世界を探検してみませんか?
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