お茶の品種「あさつゆ」はただ者じゃない!
その魅力と秘密をオタク目線で徹底解剖
お茶好きの皆さん、こんにちは!いつもの「やぶきた」に満足しきっていますか?
それも素晴らしい選択ですが、世の中にはもっと刺激的で、一度知ったら沼にハマること間違いなしのお茶の品種が存在します。

その名も「あさつゆ」!
「聞いたことあるけど、よく知らない」「なんだか高級そう」そんなイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、この「あさつゆ」、知れば知るほど面白い、まさに”推せる”品種なのです。
今回は、そんなお茶の品種「あさつゆ」が持つ唯一無二の魅力から、なぜ「幻」とまで呼ばれるのか、その秘密をユーモアを交えつつ、お茶オタクの視点で徹底的に深掘りしていきましょう!
「あさつゆ」が持つ唯一無二の特徴
まず、「あさつゆ」という品種を語る上で外せないのが、その圧倒的な個性。
他のお茶とは一線を画す、まるでアイドルグループの絶対的センターのような存在感を放っています。
濃厚な甘みと旨味!アミノ酸が織りなす「天然の玉露」
「あさつゆ」最大のチャームポイントは、なんといってもそのとろりとした濃厚な甘みと旨味です。
この極上の味わいは、旨味成分であるアミノ酸(テアニン)の含有量が、一般的なお茶の品種「やぶきた」に比べて豊富であることに由来します。
高級茶の代名詞である玉露は、茶畑を覆って日光を遮る「被覆栽培」によってアミノ酸を増やし、独特の旨味を生み出します。
しかし、「あさつゆ」は特別な被覆栽培をしなくても、品種の特性だけで玉露に匹敵するほどの強い甘みと旨味を持つことから、敬意を込めて「天然の玉露」と呼ばれているのです。



この異名だけで、そのポテンシャルの高さが伺えますね。
鮮やかな緑色が美しい水色
「あさつゆ」は、急須から注がれた瞬間に思わず「おっ!」と声が出てしまうほど、水色(すいしょく)が鮮やかな緑色をしています。
特に、茶葉を細かく砕いて成分を抽出しやすくした「深蒸し茶」にすると、その緑はさらに深まり、まるで抹茶を点てたかのような、濃厚で美しい緑色に驚かされることでしょう。
この美しい緑は、光合成を司る葉緑素(クロロフィル)が豊富である証拠。
目で見て楽しみ、舌で味わう。五感をフルに使って楽しめるのも「あさつゆ」という品種の大きな魅力の一つです。
品種特有の爽やかで個性的な香り
「あさつゆ」の香りは、一言では表現しきれないユニークさを持っています。
- 海苔のような潮の香り
- 炒った豆のような香ばしい香り
- 若葉のようなフレッシュな香り
このように、飲む人によって感じ方が変わる多面的な香りは、プロの茶師であれば飲まずとも「あさつゆ」だと判別できるほど特徴的だと言われています。
この香りは好みが分かれる部分でもありますが、一度ハマると抜け出せない中毒性を持っているのです。
なぜ「幻の品種」と呼ばれるのか?
あさつゆの希少性の秘密
これほど魅力的な「あさつゆ」ですが、実は日本茶全体の栽培面積において、ごくわずかな割合しか作られていない非常に希少な品種です。
そのため「幻の品種」とも呼ばれています。



では、なぜこんなにも美味しいのに、生産量が少ないのでしょうか。その裏には、農家さんたちの涙ぐましい努力と苦労が隠されていました。
栽培の難しさ:病気や霜への弱さ
「あさつゆ」は、一言でいえば「繊細で手のかかるお嬢様」のような品種。
収穫量も他の品種に比べて少なく、お茶の葉も小さいため、生産者からすると栽培のハードルが非常に高い品種と言えます。



この栽培の難しさが、結果的に「あさつゆ」の希少価値を高めている大きな要因です。
限られた産地:なぜ鹿児島が有名なのか
そんなデリケートな「あさつゆ」の栽培に適した土地が、温暖な気候で知られる鹿児島県です。
特に知覧茶で有名な南九州市は、全国の「あさつゆ」生産量の多くを占める一大産地となっています。
あさつゆの歴史とルーツを探る
希少で個性的なお茶の品種「あさつゆ」は、一体どのようにして生まれたのでしょうか。
その歴史を紐解くと、日本茶の聖地ともいえるあの場所に行き着きます。
誕生の背景:宇治在来種からの選抜
「あさつゆ」のルーツをたどると、高級茶の産地として名高い京都の宇治在来種に行き当たります。
1953年(昭和28年)、静岡県の茶業試験場(当時)で、宇治の在来種の中から特に優れた個体が選抜され、「あさつゆ」として品種登録されました。
これは、現在の日本茶の王様「やぶきた」と同年というから驚きです。
玉露や抹茶の生産で名高い宇治の血を引いていると聞けば、あの濃厚な旨味にも納得がいきますね。
名前の由来と品種に込められた想い
「あさつゆ」という詩的で美しい名前は、その若葉が「朝露(あさつゆ)に濡れたように瑞々しく美しい緑色をしている」ことに由来すると言われています。
開発者たちが、その鮮やかな緑の葉を見て、夜明けの茶畑にキラキラと輝く朝露の光景を重ねたのかもしれません。
この名前には、新しいお茶の品種への大きな期待と愛情が込められているように感じられます。
【徹底比較】あさつゆと他の人気品種との違い
お茶オタクとしては、他の品種との違いも気になるところ。ここでは、代表的な2つの人気品種と「あさつゆ」をマニアックに比較してみましょう。
品種名 | 甘み・旨味 | 渋み | 香り | 水色 | 特徴 |
あさつゆ | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ | 個性的(海苔、穀物様) | 非常に濃い緑 | 甘み・旨味特化型。「天然の玉露」と呼ばれる品種。 |
やぶきた | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 爽やかで清涼感 | 明るい黄色がかった緑 | バランスの取れた王道。日本の栽培面積の約7割を占める。 |
さえみどり | ★★★★☆ | ★★☆☆☆☆ | 上品でミルキーな甘い香り | 鮮やかな緑 | 「あさつゆ」と「やぶきた」の子供。甘みが強く人気急上昇中。 |
王道「やぶきた」との香味バランスの違い
日本茶のスタンダードである「やぶきた」は、旨味、甘み、そして爽やかな渋みのバランスが取れた優等生タイプのお茶です。
一方、「あさつゆ」は渋みが極めて少なく、甘みと旨味にステータスを全振りしたような「旨味特化型」の品種。
バランスの「やぶきた」、一点突破の「あさつゆ」と覚えると、そのキャラクターの違いが分かりやすいでしょう。
人気急上昇「さえみどり」との違い
近年人気を集めている「さえみどり」は、実は「あさつゆ」を母親に、「やぶきた」を父親に持つサラブレッド品種です。
そのため、両親の良いところを受け継いでおり、「あさつゆ」譲りの強い甘みと、「やぶきた」譲りの育てやすさを兼ね備えています。
「さえみどり」と「あさつゆ」はどちらも甘みが強い品種ですが、香りの質が異なります。
「さえみどり」が上品でややミルキーな甘い香りを放つのに対し、「あさつゆ」はより個性的で爽やかな香りが特徴です。



親子でありながら、それぞれに違った個性があるのがお茶の品種の面白い点です。
あさつゆのポテンシャルを最大限に引き出す美味しい淹れ方
せっかくの希少な品種「あさつゆ」ですから、最高の状態で味わいたいもの。
ここでは、そのポテンシャルを120%引き出すための淹れ方をご紹介します。
基本の淹れ方
旨味をじっくり引き出す(一煎目)
「天然の玉露」の異名を持つ「あさつゆ」の一煎目は、低温でじっくりとその旨味を抽出するのがセオリーです。
沸騰したお湯を一度湯呑みに注ぎ、70℃前後に冷まします。
急須に少し多めの茶葉(1人あたり約3〜4g)を入れます。
冷ましたお湯を急須にそっと注ぎます。
約1分〜1分半ほど、急須を揺らさずに静かに待ちます。
各湯呑みに少しずつ均等に注ぎ分け、最後の一滴まで絞り切ります。この「ゴールデンドロップ」に旨味が凝縮されています。



この方法で淹れると、とろりとした甘みが口いっぱいに広がる、極上の一杯が楽しめます。
二煎目の楽しみ方:高温で爽やかな香りを
一煎目で旨味を堪能したら、二煎目は少し違った表情を楽しみましょう。
一煎目よりも高い温度(約80〜85℃)のお湯を急須に注ぎます。
待ち時間はほとんど置かず(10秒程度)、すぐに湯呑みに注ぎ分けます。



高温で淹れることで、渋み成分であるカテキンが適度に抽出され、味わいにキレが出ると同時に、「あさつゆ」特有の爽やかな香りが引き立ちます。一煎目とのギャップを楽しむのがツウの飲み方です。
上級編:水出しで楽しむ極上の甘み
暑い季節や、じっくりとお茶の甘みを味わいたい時には、水出しが最高におすすめです。
ポットに茶葉(水1リットルに対し10〜15g程度)と水を入れます。
冷蔵庫で3〜6時間ほど置いておくだけで完成です。
水でじっくり抽出することで、渋みや苦み成分(カテキンやカフェイン)の抽出が抑えられ、旨味・甘み成分であるテアニンが最大限に引き出されます。



驚くほどまろやかで、とろりとした甘みのある極上の冷茶が楽しめます。
あさつゆを深く味わうための豆知識
最後に、知っているともっと「あさつゆ」を楽しめる、オタク的な豆知識を2つご紹介します。
深蒸し茶でこそ活きる「あさつゆ」の個性
「あさつゆ」は、通常の煎茶よりも蒸し時間を長くする「深蒸し茶」に加工されることが多い品種です。
蒸し時間が長いと茶葉の組織が壊れ、お茶の成分が抽出しやすくなります。
これにより、「あさつゆ」の持ち味である濃厚な旨味と美しい水色が、より一層際立つのです。
市場に出回っている「あさつゆ」のお茶の多くが深蒸し茶なのは、この相性の良さゆえです。
ブレンドでの役割
お茶に深みを与える名脇役
「あさつゆ」は単品(シングルオリジン)で楽しまれるだけでなく、ブレンド茶においても重要な役割を果たします。
その鮮やかな水色と濃厚な旨味は、他のお茶の品種に混ぜることで、ブレンド全体の味に深みとコクを与え、見た目を美しくする効果があります。
例えば、味わいのバランスが良い「やぶきた」に「あさつゆ」を少量ブレンドすることで、旨味と水色を強化したワンランク上のお茶が生まれるのです。まさに、お茶の世界の名脇役ともいえる存在です。
保存方法と注意点
お茶はとてもデリケートな食品です。美味しさを長持ちさせるためには、正しい保存方法が欠かせません。
お茶の品質を損なう5つの敵は「湿度・酸素・光・高温・移り香」です。
これらから茶葉をいかに守るかが、美味しさを保つ秘訣になります。
【未開封の場合】
購入した状態のまま、冷蔵庫や冷凍庫で保存するのがおすすめです。
ただし、庫内から出してすぐに開封するのは絶対にNG!温度差で袋の表面に結露が生じ、茶葉が湿気る原因になります。
必ず、飲む前日に冷蔵庫から出し、一晩かけて常温に戻してから開封してください。
【開封後の場合】
一度開封したお茶を冷蔵庫に入れるのは避けましょう。
冷蔵庫内の他の食品の匂いを吸収してしまい、お茶本来の風味が損なわれてしまいます。
- 密閉容器で光を遮断: 茶筒や、気密性の高いチャック付きの袋など、光を通さず、しっかりと密閉できる容器に移し替えましょう。
- 冷暗所で常温保存: 直射日光が当たらず、涼しい場所(食器棚など)で保管するのが基本です。
- 早めに飲み切る: 開封後は、空気に触れることで少しずつ酸化が進みます。美味しいうちに飲み切るのが一番です。できれば夏場は2週間、冬場でも1ヶ月程度で飲み切るようにしましょう



もし風味が落ちてしまったと感じたら、フライパンで軽く乾煎りして「自家製ほうじ茶」にするのもおすすめです。
焦がさないように弱火でじっくり煎れば、香ばしいほうじ茶として最後まで美味しく楽しめます。
AFTERWORD
一度は味わいたい、希少品種「あさつゆ」の奥深い世界
「天然の玉露」と称されるほどの濃厚な甘みと旨味、目を楽しませる鮮やかな水色、そして一度知ったら忘れられない個性的な香り。
その一方で、栽培が難しく希少価値が高いという、どこかミステリアスな側面も持つお茶の品種「あさつゆ」。
ただのお茶の一品種として片付けるには、あまりにもドラマチックで奥深いストーリーを持っています。
いつものお茶に少しマンネリを感じているなら、ぜひ一度「あさつゆ」の世界に足を踏み入れてみてください。
きっと、あなたのお茶ライフに新たな扉を開いてくれるはずです。さあ、あなたも今日から「あさつゆ」推しになりませんか?
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