さえみどりってどんなお茶?
基本情報を知ろう
「さえみどり」という名前、聞いたことがありますか?
もしご存知なら、あなたは相当な日本茶好きかもしれませんね!
「初めて聞いた」という方も、どうぞご安心を。
この記事を読み終える頃には、きっと「さえみどり」の魅力に夢中になっているはずです。
「さえみどり」は、数ある日本茶の品種の一つです。
お米に「コシヒカリ」や「あきたこまち」があるように、お茶の木にもたくさんの品種が存在します。
その中でも「さえみどり」は、1990年に品種登録された比較的新しいスター選手。
なんと、栽培面積では王者の「やぶきた」、2位の「ゆたかみどり」に次いで、全国3位を誇る人気品種なのです。
その名の由来は、お茶を淹れた時に現れる「冴えわたる鮮やかな緑色」。

さえみどりのお茶を淹れた瞬間、「あ~なるほどね!」ってなるぐらいきれいな緑色してます。
しかし、魅力は見た目だけではありません。
味も香りも一級品で、多くの日本茶ファンを虜にしています。
特に、渋みが少なく上品な甘みと旨みが強いのが最大の特徴。



「渋いお茶はちょっと苦手…」という方にこそ、ぜひ一度試していただきたい、優しさと華やかさを兼ね備えたお茶なのです。
さえみどりの3つの特徴
味・香り・水色
「さえみどり」の人気の秘密は、なんといっても「味」「香り」「水色(すいしょく)」の三拍子が完璧に揃っている点にあります。
それぞれの特徴を、もっと詳しく見ていきましょう。
- 渋みが少なく上品な甘みと旨み
- 若葉のような上品な香気
- 「冴えた緑」の名にふさわしい鮮やかな水色
特徴1:渋みが少なく上品な甘みと旨み
「さえみどり」の最大の魅力は、その味わいにあります。
お茶の渋み成分であるカテキンが少なく、旨みと甘みの元となるアミノ酸(特にテアニン)が非常に豊富に含まれているのです。
そのため、口に含むと、まるで玉露のような濃厚でまろやかな旨みと、後から追いかけてくる上質な甘みがふわりと広がります。



この「旨甘(うまあま)」な味わいは、後味もすっきりしているため、渋いお茶が苦手な方やお子様にも大好評。
「こんなに甘いお茶は初めて!」と驚かれることも少なくありません。
まさに、誰もが笑顔になる、優しさあふれる味わいが楽しめます。
特徴2:若葉のような上品な香気
「さえみどり」は、香りも格別です。
急須にお湯を注いだ瞬間に立ち上るのは、若葉を思わせるような、爽やかで気品のある香り。
派手さはありませんが、すっと心に染み渡るような心地よい香りは、一日の疲れを癒すリラックスタイムにぴったりです。
この繊細な香りを最大限に楽しむなら、少し低めの温度でじっくりと淹れるのがおすすめ。
さえみどりが持つポテンシャルを余すことなく引き出し、至福の一杯を堪能できます。
特徴3:「冴えた緑」の名にふさわしい鮮やかな水色
名前の由来にもなっている通り、「さえみどり」は淹れた時のお茶の色(水色)が非常に美しい品種です。
透明感のある、明るく冴えた緑色は、見ているだけで心が洗われるよう。
この美しい緑色は、茶葉を少し長く蒸して作る「深蒸し茶」に加工された時に、より一層際立ちます。
ガラス製の急須や湯呑みを使えば、茶葉がゆっくりと開いていく様子と、美しい緑色が溶け出していくグラデーションを目でも楽しめます。



おもてなしの席に出せば、その美しさに会話が弾むこと間違いなしです。
さえみどりの誕生秘話と歴史
今や全国区の人気を誇る「さえみどり」ですが、その誕生は、お茶の品質向上に情熱を注いだ研究者たちの努力の賜物でした。
親は「やぶきた」と「あさつゆ」のサラブレッド
「さえみどり」の両親は、なんとお茶界の超有名品種同士。
母親は、現在も日本の栽培面積の約7割を占める不動の王者「やぶきた」。 そして父親は、「天然の玉露」との異名を持つほど強い甘みが特徴の「あさつゆ」です。
1969年、当時の農林省茶業試験場枕崎支場(現在の鹿児島県南九州市)で、この二つの優良品種が交配され、「さえみどり」は産声を上げました。
目指したのは、まさに「やぶきた」の育てやすさと優れた香気、そして「あさつゆ」の濃厚な甘みを兼ね備えた、夢のような品種。
長い年月をかけた選抜と試験を経て、1990年に「茶農林40号」として正式に品種登録されたのです。



まさに、お茶界のサラブレッドと呼ぶにふさわしいエリート品種と言えるでしょう。
【徹底比較】他の人気品種との違いは?
「さえみどりの魅力はわかったけど、他の品種とは具体的にどう違うの?」そんな疑問にお答えします。
ここでは、代表的な人気品種「やぶきた」「おくみどり」「あさつゆ」と「さえみどり」を比較してみました。
それぞれの個性を知れば、気分や好みに合わせたお茶選びがもっと楽しくなりますよ!
品種名 | 味の特徴 | 香りの特徴 | 水色 | 収穫時期 |
さえみどり | 渋みが少なく、強い甘みと旨み | 若葉のような上品な香り | 明るく冴えた鮮やかな緑色 | 早生 |
やぶきた | 甘み、旨み、渋みのバランスが良い | 爽やかで力強い香り | 黄色がかった緑色 | 中生 |
おくみどり | すっきりとした甘みと爽やかな香り | クセがなく穏やか | 透明感のある濃い緑色 | 晩生 |
あさつゆ | 「天然玉露」と呼ばれるほどの強い甘み | 穀物のような独特の香ばしさ | とろみのある深緑色 | 早生 |
「やぶきた」との違い
日本のスタンダード品種である「やぶきた」は、爽やかな香りと、甘み・旨み・渋みの三要素が絶妙なバランスで調和しているのが特徴です。
一方の「さえみどり」は、やぶきたに比べて渋みが格段に少なく、甘みと旨みが際立っています。
バランス型でどんなシーンにも合う優等生の「やぶきた」と、甘みと旨みに特化した華やかなエリートの「さえみどり」。
気分によって飲み分けるのも楽しいですね。
「おくみどり」との違い
「おくみどり」は、その名の通り収穫時期が遅い「晩生(おくて)」の品種です。
すっきりとした味わいと穏やかな香りでクセがないため、単一品種だけでなく、ブレンド茶のベースとしても活躍します。
一方、「さえみどり」は収穫時期が早い「早生(わせ)」品種。
より若々しく華やかな香りと、濃厚な甘みを楽しみたいときにおすすめです。
「あさつゆ」との違い
父親である「あさつゆ」は、「天然の玉露」と称されるほど、ずば抜けて強い甘みが特徴の品種です。
子である「さえみどり」もその甘みをしっかりと受け継いでいますが、「あさつゆ」が持つ穀物のような独特の香ばしさとは異なり、より爽やかで上品な若葉の香りがします。
親子でありながら、それぞれに異なる個性的な魅力を持っています。
さえみどりの主な産地
「さえみどり」は温暖な気候での栽培に適しているため、その誕生の地である鹿児島県が最大の産地です。
特に、ブランド茶として名高い「知覧茶(ちらんちゃ)」の産地である南九州市周辺では、主力品種の一つとして広く栽培されています。
近年では、その品質の高さと人気から、同じく九州の宮崎県や、日本一の茶どころ静岡県、さらには近畿地方などでも栽培面積が広がっています。
家庭でできる!さえみどりの美味しい淹れ方
「さえみどり」のポテンシャルを最大限に引き出すのは、決して難しくありません。



最大のコツは「お湯の温度」。このポイントさえ押さえれば、誰でも簡単にお茶屋さんで飲むような本格的な味わいを再現できます。
準備するもの(1人分)
- さえみどりの茶葉: ティースプーンに軽く2杯(約5g)
- お湯: 約150ml
- 急須
- 湯呑み
- 湯冷まし(なければ別の湯呑みでも代用可)
美味しく淹れる3つのステップ
沸騰したお湯(約100℃)を、まずは湯呑みに注ぎます。器にお湯を移すたびに、温度は約10℃下がります。
次に、そのお湯を急須に移し、さらに湯冷まし(または空の湯呑み)へ。
このひと手間で、お湯の温度は「さえみどり」の甘みと旨みを引き出すのに最適な70℃前後になります。
同時に湯呑みも温まり、お茶が冷めにくくなるというメリットもあります。
茶葉を入れた急須に、70℃に冷ましたお湯を静かに注ぎ、蓋をして約1分間じっくりと待ちます。
この「待ち」の時間が、旨み成分をたっぷりと抽出するための大切な時間です。
複数の湯呑みに注ぐ場合は、お茶の濃さが均一になるように少しずつ交互に注ぎ分ける「廻し注ぎ」をします。
そして、急須を軽く振って「ゴールデンドロップ」と呼ばれる最後の一滴まで注ぎ切りましょう。
この最後の一滴に、お茶の美味しい成分が凝縮されています。
二煎目も美味しく楽しむコツ



「さえみどり」は二煎目も美味しくいただけます。一煎目との味の違いをぜひ楽しんでください。
二煎目は、一煎目よりも少し高めの80〜85℃くらいのお湯を使います。
茶葉がすでに開いているため、お湯を注いだら10〜20秒ほどですぐに注ぎましょう。
一煎目の濃厚な甘みとは対照的に、二煎目は少しキリッとした渋みも感じられる、爽やかな味わいが楽しめます。



これこそ、急須で淹れるお茶ならではの醍醐味です。
保存方法と注意点
お茶はとてもデリケートな食品です。美味しさを長持ちさせるためには、正しい保存方法が欠かせません。
お茶の品質を損なう5つの敵は「湿度・酸素・光・高温・移り香」です。
これらから茶葉をいかに守るかが、美味しさを保つ秘訣になります。
【未開封の場合】
購入した状態のまま、冷蔵庫や冷凍庫で保存するのがおすすめです。
ただし、庫内から出してすぐに開封するのは絶対にNG!温度差で袋の表面に結露が生じ、茶葉が湿気る原因になります。
必ず、飲む前日に冷蔵庫から出し、一晩かけて常温に戻してから開封してください。
【開封後の場合】
一度開封したお茶を冷蔵庫に入れるのは避けましょう。
冷蔵庫内の他の食品の匂いを吸収してしまい、お茶本来の風味が損なわれてしまいます。
- 密閉容器で光を遮断: 茶筒や、気密性の高いチャック付きの袋など、光を通さず、しっかりと密閉できる容器に移し替えましょう。
- 冷暗所で常温保存: 直射日光が当たらず、涼しい場所(食器棚など)で保管するのが基本です。
- 早めに飲み切る: 開封後は、空気に触れることで少しずつ酸化が進みます。美味しいうちに飲み切るのが一番です。できれば夏場は2週間、冬場でも1ヶ月程度で飲み切るようにしましょう



もし風味が落ちてしまったと感じたら、フライパンで軽く乾煎りして「自家製ほうじ茶」にするのもおすすめです。
焦がさないように弱火でじっくり煎れば、香ばしいほうじ茶として最後まで美味しく楽しめます。
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